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読書日記37

ウルリケ・ヘルマン『スミス・マルクス・ケインズ:よみがえる危機への処方箋』みすず書房 (2020)

つづきを読み進めた。

https://labo-dokusyo-fukurou.net/2024/04/03/%e8%aa%ad%e6%9b%b8%e6%97%a5%e8%a8%9836-2/

アダム・スミスの章を読みきることができた。

そして僕は、なぜ彼が『道徳感情論』という本も書いたのか少し分かった気がする。

彼は東インド会社の腐敗や貴族の贅沢ぶりに嫌気がさしていた。

スミスの指摘したことが現代経済にもいくつか当てはまることから、単に不満をぶちまけるために本を書いていないことが分かった。

例えば、「搾取行為は搾取側をも貧しくする」という発言や、「豊かさは近隣諸国も豊かになってはじめて実現しうる」という発言には、利己的な企業行為が、長期的には無意味になるという現代の社会にも通用する普遍性がある。

そして、「貧困者にも富の恩恵にあずかれるようにしなければならず、分業は不可欠」という発言も、今日の社会保障という概念に通ずるものがある。

昔の経済学は数学に頼らなかったがゆえに、逆説的に人間の本質をうまく捉え、肝心な部分は説明できているように僕は感じた。

その思想をリカードという人物が引き継ぐ。

彼は庶民から投資に成功し、大富豪にのぼり詰めた実力者であった。

彼もまた一年間、ずっと価値について考えつづけた。

最終的にスミスの「自然価格」を採用した。つまり、価格は財を生産するのに費やした「労働の量」によってのみ決まるとした。

つまり資本家は無用の長物であるということだった。

彼はマルサスの人口論に従って、人口が爆発すれば最終的に資本家の利潤は低下すると説いたが、そこは当たらなかったという。

そしてこの思想を今度はカール・マルクスが引き継ぐことになる。

つづく

公開日2022-01-15

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