この本は医学部を出て研修医を経験し、その後医学博士となった人が書いたものである。
僕は昨年、認知行動療法を受けていた頃から、哲学・文学・芸術と精神疾患には親和性があると感じていた。
本書は特に統合失調症が根幹となっている。
内容は難しいものの、新しい知見をところどころで吸収できた。
僕は今年になってヘルダーリンという偉大な詩人について知った。
昨日書いた記事にも仲正昌樹氏を挙げたが、仲正氏は博士論文でヘルダーリンについて論じている。
その本を入手したわけではあるが、あまりにも難しいので少しずつ読むことにしている。
そして、そのヘルダーリンが統合失調症に罹ったというのがこの本の話なのである。
大きなテーマは、精神病が創造力をエンパワーメントするのか否か、ということである。
これを思想家フーコーやモーリス・ブランショ、デリダらが論じていたということを知った。
僕はモーリス・ブランショという人の『文学空間』という本の存在を知っていたのではあるが、何を論じているのかさっぱりわからなかった。ところが、どうやらヘルダーリンと関係しているというのである。
だんだんと僕の地図がマッピングされていく気分になった。
『ロクス・ソルス』という本がある。この本に「フーコーが称賛した」という旨が書かれているが、これを書いたルーセルという人も精神疾患に罹っていたそうなのである。
そんな中、デリダが「統合失調症と特異性を即座に結びつけるのは安易だ」と言っていたそうである。
また、ドゥルーズは『アンチ・オイディプス』でスキゾについて考察をする。丁度僕が今、仲正氏の解説書を読んでいる段階である。
ということで、本というものは、目には見えにくいものの、必ず接着点があるものであると感じた。これが複数の本を同時に読む醍醐味である。
僕はこの本を元に仲正氏の本を読み進めたい。非常に参考になった。
つづく
公開日2021/12/30