こちらのつづきを読み進める。
今回は第三世代と呼ばれるアクセル・ホネットの『正義の他者』を取り上げる。
ホネットはハーバーマスの「討議倫理」を高く評価した。
しかしながら、それでは具体的に正義を考察できないと指摘する。
ホネットは「不正」の観点から正義を3つに分けて考察した。
・個人としての承認
まず第一に、身体の安全を享受し得るという確信を、人格から奪い去ってしまうような道徳的毀損を挙げた。
この行為によって自己への信頼が破壊されるとした。例としては虐待、暴行、拷問を挙げた。
まず、個体として承認される必要性を提唱する。
・人格としての承認
第二に、人格の道徳的責任能力を無視するような道徳的毀損を挙げた。
この行為によって破壊されるのは自己への尊厳である。
人間が自己を尊敬できるのは、自己の判断形式が他者に承認される場合であるとした。
これが詐欺や裏切りなどによって破壊される。
法律の観点から人格を承認する必要性を提唱する。
・共同体に参画する人格としての承認
第三に、個人の能力が全く評価されていないという確信を与えてしまうような道徳的毀損を挙げる。
汚名を着せたり、社会的名誉を毀損させる行為などが挙げられる。
この行為が自己評価を破壊させる。
共同体の観点から人格を承認する必要性を提唱する。
ホネットはこの3つの観点を鑑みて、あらかじめ正義を規定することはできないとした。
それぞれ衝突する可能性があるが、その都度個人的な責任においてのみ解決できると主張する。
しかし著者によれば、正義を経験的に列挙するのではなく、原理的に考察する道を開いたと述べた。
つづく
公開日2022-01-27