今野晴貴『賃労働の系譜学 : フォーディズムからデジタル封建制へ』青土社(2021年)を読む。
本書は一橋大学大学院の後期課程を修了( 社会学 )し、現在NPO法人の代表を勤め、日々労働問題と闘っている方が、現場から何が起きているのかを系譜学的に考察する本である。
タイトルにあるように著者は、資本主義が日々変化しつつ、コロナ禍によってさらに異質なものとなり、結果的に封建制に回帰しつつあるのではないか、という仮説を提示する。
不況の様相を呈しているものの、株価は上がりつづけ、富裕層や大企業を中心とするアッパーミドル以上は概ね安定したままでありながらも、サービス業を中心とする中間層以下は貧困になりつつある。
僕がなんとなく思っているのは、派遣村の頃から企業は短期的な利益に目を奪われ、従業員全体を大事にしてこなかった体制や文化が、そもそも今までの失われた30年と呼ばれる日本不況の原因ではないのか、ということである。
僕が学生の頃から「即戦力」というフレーズが就職活動のメインテーマであるように感じていた。
もはや育てる余裕がないくらい、忙しくてピンチなのだろうか。
逆説的にそれがうまく機能していないようにもみえる。
僕はあくまでマクロ的な視点からでしか物を言えないので、仮説にすぎない。
本書を通じて、この閉塞感の本質を理解したいと思う。
つづく
公開日2022-01-28