橘玲『「読まなくていい本」読書案内 知の最前線を5日間で探検する』筑摩書房(2015年)を読む。
橘氏はソーカル事件を紹介し、ポスト構造主義の思想が知のパラダイムによって陳腐化され、もはや今読むに値しない、と言う。
ソーカル事件とは、一言で言えば理系の人間がふざけて意味不明の用語を使い、思想の論文を発表して審査に通ったことから、思想の学問はデタラメであることを暴いた事件である。
橘氏によれば、ドゥルーズとガタリという思想家が「リゾーム」という概念を提唱したが、のちに「フラクタル」という概念の登場によって知のパラダイムが起き、「リゾーム」はもはや無意味なものになってしまったという。
僕は今もドゥルーズを読みガタリも読む。
そして「フラクタル」の基礎的な原理も理解しているつもりである。
世の中はフラクタル構造である。
橘氏の提案をのむか、否か。
僕は拒否する。
最先端の本も読み、古今東西の本も読む。
要はバランスが大事だ。
要らないものを切り捨てる態度は、合理主義のようなものだ。
この発想には何か欠けているように僕は感じる。
橘氏の本は参考にはなるが尊敬はできない。
つづく
公開日2022-02-02
補足:
この作家は自分にとって諸刃の剣のような存在であった。
良い点を突いている面もあり、悪い面を強調している節もある。
学術的には、ドゥルーズの本は読むに値しないというのは暴論だと思われる。
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