つづきを読み終えた。
精神鑑定医は、小島氏は猜疑性パーソナリティ障害と結論付けていて、物事を被害的に解釈しがちであると述べた。
記憶力は非常に非凡であることが手紙のやりとりから伝わる。
責任能力も認められ、正直なところ、たったひとつの倫理観を除けば彼は正常というのが印象である。
一方で、この事件の本質、真の犯行動機をたどるのはおよそ不可能と思われる。
読めば読むほどに、ますます分からなくなる。
社会に適応できないうえ、家庭では安全に暮らせないので刑務所で暮らすことが最も安心して暮らせるという結論に至る彼の論理は、もはや論理では説明できない。
ひとつの物事に異常にこだわるという彼の特性を鑑みれば、視野狭窄的にそういう結論に至ってしまったのではないか、とも思うものの、これだけでは説明しきれない。
それほどに複雑な事件であった。
つづく
公開日2022/2/8
補足;最近は「他者」という言葉が本のタイトルのなかによく見受けられる。
こういった事件を学問的に研究することに意義はあるだろうけれども、完全に理解することは不可能だと自分は見ている。
どれだけ理解できるか。どこまで接近できるか。それは他者の声にただひたすら耳を傾けるしかないと今では考えている。