半分ほどいっきに読んだ。
Googleで検索すればすぐに答えが出る現代、答えのない問題を突き詰める環境が弱い。
世の中は一問一答では成立していない。
個人的には『疲労社会』に触れられたページが印象的であった。
この本は数日前に読んだが、主張と具体例がセットで論じられることがあまりないので解釈に幅が生まれる。
本書では谷川氏が二つ事例を提出してくれている。
ビョンチョル・ハン氏の言う「疲労」というのは「私たちを和解させてくれる疲労」を指すようである。
戦争が無くなる世界を想像することは難しいが、永遠に続く戦争というものはない。
人間、怒りというものはなかなか持続しないもので、例えば立てこもり事件はあっという間に収束したりする、
ここに「私たちを和解させる疲労」の効力が見える。
つまり、疲労は余計な意地やプライドを弱める効果を持っている。
この話は面白いと思った。
何事も必ずマイナスとプラスの面を持っているということを再度認識させられる。
高校数学で習った、1と-1の間を永遠に循環するサインカーブとコサインカーブを思い出す。
もうひとつ、アイヒマンに関する話も印象的であった。
ハンナ・アーレントが「凡庸な悪」と呼んだために、アイヒマンが普通の人間として写ってしまっている節があるが、近年の研究によれば、アイヒマンは根っからの反ユダヤ主義者だった可能性があると論じられているそうである。
物事は遅かれ早かれ、少しずつ更新されていく。
数学においても、物理においても、歴史学においても、少しずつ更新されていく。
まるで不変の真理が存在しないかのように。
万物流転。
物質でさえも、永遠に原型をとどめるものは存在しない。
「世の中はフラクタル構造である」と書いた、某有名医の言葉を思い出した。