エリック・カンデル『脳はなぜアートがわかるのか:現代美術史から学ぶ脳科学入門』青土社(2019年)も読む。
『抽象の力』によれば、日本においても発生したキュビスムは、単に西洋を模倣したのではなく、なかば必然的に発生したのだそうだ。つまり同時発生的に日本いおいてもキュビスムが確認された。
本書によれば、日本にもキュビスムが生まれる土台は整っていたとされる。
『脳はなぜアートがわかるのか』においては、脳のボトムアップ処理とトップダウン処理が視覚システムとして説明できるとされる。
低次と中間の情報は先天的なもので、魔術的に視野を作り出す。トップダウン処理は後天的なもので、これは解釈にあたる。
顔の識別機能に関しては、幼少期から驚くべき能力を人間はみせつける。
光学、神経科学などあらゆる領域からその原理に関して説明がなされる。
脳科学とアートの関係について学べることが出きる良書である。
僕は言語化できないにも関わらず処理が容易であるこの視覚システムに大いなる謎と魅力を感じる。
この不思議については以前記事にした。
言語化できないけれども何かの仕事(=作業)ができる、という現象が世の中にはいくらでもある。
この断絶について僕は大いに関心がある。
それを「表現」という形にして視覚に訴えるのが芸術であると思うのであるが、それを「言語化」するのが哲学者や科学者の仕事なのだろう。
つづく
公開日2022-03-12