松本俊彦『誰がために医師はいる』のつづきを読む。
覚醒剤使用者への異常なバッシングが逆説的に抑止力を阻害しているのだと著者は指摘する。
むしろアルコールのほうが社会にとって大きな害となっている見方である。
これに関しては別の作家も同じことを言っている。僕もその意見を過去に読んでいたことがあり、アルコールは飲酒運転や児童虐待など間接的に人を苦しめている。
そして、幼い頃に虐待を受けた児童はトラウマが内在化する。
「痛みをもって (トラウマ等の) 痛みを制する。」
リストカットの心理が少しだけ分かったような気がした。
夜になると気が狂いそうになり、痛みでごまかす。
この悪循環は目に見えない形で連鎖していることを著者は見抜いた。
専門家でも長年の臨床経験を通してやっと気づける問題を、どうして私たち素人が知ることができるか。
僕はただ単にバッシングすることの無意味さを痛感した。
覚醒剤防止キャンペーンとして、子供たちが絵を書いてコンクールに応募。
著者は賞を選ぶ選考員として依頼されたそうであるが、実際に描かれている人物像(痩せこけてゾンビみたいな人物)は全く現実とかけはなれていることに嫌気がさしたという。
言うまでもなく、マスコミなどの刷り込みである。
かくして負の連鎖は助長される。
偏見が偏見を生み、マイノリティが余計に苦しむ。
あってはならないことが起きている。
これを見てみぬフリをするような人間にはなりたくないと思った。
つづく
公開日2022-03-27