斎藤幸平『人新世の「資本論」』集英社新書(2020年)を読む。
本書は新書では最近もっとも売れた部類に入る有名な本である。
SDGsに対して懐疑的で、日本における「脱成長派」の代表格とも言える。
斎藤氏は「オランダの誤謬」というものを挙げる。
これは、環境への負荷を考慮しながら同時に経済成長も達成した事例のお話である。
ところが、斎藤氏によればツケを「南側諸国」にまわしただけにすぎず、この話にはカラクリがあり、経済成長で環境問題を解決できると思い込ませてしまうと指摘する。
最近読んだ本は、この誤謬に触れることなく、「経済成長で環境問題が解決できた例も存在する」と紹介されていた。
素人には判定は難しいが、仮に斎藤氏が正しければ、「成長派」言説が空虚なものとなる。
多読の醍醐味は、この食い違いがハッキリと読者に伝わってくることである。
一冊の本を読んだところでほとんど役には立たない。
「三冊同時に読め」
と謳う本もあるが、これは道理にかなう。
多角的に物事をみていきたいものである。
僕は「成長派」の本をもっと読まねばならない。
つづく
公開日2022-03-28