■株式会社白水社
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日記
ジャン・パウル『美学入門 新装復刊』白水社 (2010年) と、
ディケンズ『大いなる遺産』新潮文庫のつづきを読む。(読書日記496に収録)
カントは美を次のように定義した。
“「美とは、概念なしに普遍的に満足を与えるものである」” P46 『美学入門 新装復刊』
概念はある表象の共通性を抜き出した部分。
表象とはイメージ。心に描く像。
満足とは「完全なもの」と「不満不平がないこと」を意味する。
「普遍的」とは、多くの物事に当てはまることを指す。
日本語の基本をまず自分で調べた。
そしてゆっくり考える。
おそらく満足は「完全」のほうを指すように思う。
満たす。数学で言うならば、条件を満たす、といった具合に。
まずは、
美とは概念なしに多くの物事に「完全性」を与えるもの、と意訳してみた。
「概念なしに」がピンとこない。
ここは「無意識」としてみる。
つまり、
美とは半ば無意識のうちに、多くの物事に完全性を与えるもの、とも言えるのかもしれない。
「美が無意識のうちに」という言い方はおかしいので、
美とは、直接的に多くの物事に完全性を与えるもの、と意訳してみた。
数学の公式や物理の公式には美しいものが多いとされる。
すなわち、
「完全性 ≒ 美」
と言えるのかもしれない。
これ以上改良の余地がないもの。
ズレがないもの。
梱包の際、例えば裏と表が1ミリもずれていない時、人は美しいと言うだろう。
そういうものを人は美というのかもしれない。
「美しい小説」とは何をさすだろうか。
これ以上改善の余地がない小説。
それはある程度理解できる。
ズレていない、ぶれていない小説。
裏表が完璧に一致した小説。
そうなると意味が分からない。
「調和のとれた小説」
抽象的だ。
「人々を善きものにする小説」
プラトンは善いこと、そしてイデアというものについていろいろと語ってはいるが、少々抽象的なものであった。これはやはり自分で考えるしかないのだろう。
善いとはなにか。
この問いを始めると「美」から少し離れてしまう気がする。
もっと深いことを考えてみる。
例えば、何故人は「美」と「完全」という二つの言葉を用意したのか。
さらにもっと深いことを考えてみる。
「イデア」とは、最終的にあらゆる言葉を必要とするかもしれない。
「美」だけではイデアを説明しきれない。だから「完全」という言葉も必要であり、さらに「善」という言葉も必要である、という具合に。
つづく
公開日2022-06-17