閉じる

読書日記632

    松田浩道『リベラルアーツの法学』東京大学出版会(2022)

■一般財団法人東京大学出版会

公式HP:https://www.utp.or.jp/

公式X(旧 Twitter):https://twitter.com/UT_Press?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

日記

自由、道徳、倫理、経済、文学など、「リベラルアーツ」と法律の関係について学べる一冊である。

講義を文章化したものとなっていて、教科書のように事実の羅列ではなく、読み物として楽しく読めるような構成となっている。

内容は深く掘り下げず、広く扱っているので忘れかけていた大事なことも思い出させてくれる。

岩井克人がシェイクスピア『ヴェニスの商人』について論じた『ヴェニスの商人の資本論』が取り上げられた。

岩井氏によれば、利潤は二つの価値体系における「差異」から生まれ、資本主義の絶え間ない経済機構は利潤を得るための「永久運動」であるとした。

二つの価値体系とは、単純に「二人の価値観」と捉えればよいと思われる。

例えば砂糖がたっぷり入っているコーラに10円ですらもお金をかけたくない人がいれば、特売品のコーラならいくらでも買いたい人もいる。そういう話であると思われる。

岩井氏によれば、利潤の獲得によって差異が消滅する。

日々新しい商品が生まれるのは利潤のための「差異」の生産と考えられる。

「価値」とはどこまでも交換の可能性を内包した「等価性」である。

カントは価値と尊厳を区別した。

後者は交換不可能なものであることは言うまでもない。

「お金で買えないもの」の価値とは。

つまりは一回生であり再現不可能なもの、等価性のないもの。

価値という体系の外部にあるものについていろいろと思いをめぐらせた。

言うまでもなく、人新世はこの「外部」が問われている。

公開日2022/8/26

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。必須項目には印がついています *

© 2024 ラボ読書梟 | WordPress テーマ: CrestaProject の Annina Free