■株式会社新潮社
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感想
日本においてキリスト教に偏見のあった時代。
主人公は、人間は皆平等であると書いた福沢諭吉の教えを実行した父親に影響を与えられ、それを受け継いだ。
キリスト教信者も仏教信者も、人間存在としては皆等しいという考えを始終持ちつづけた。
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最近はあまり強調されなくなったようにみえるが、「多様性」という言葉、そして価値観の多様性が重視されるようになった。
一方で、それは「相対主義」と親和性が高い。
社会学者の小坂井敏晶氏は『答えのない世界を生きる』(2017)のなかで「真理は絶対的ではない」という主張をした。
正義論も行き詰まっているようにみえ、いつまでも決着は見えない。
その雰囲気が相対主義の背中を押しているようにもみえる。
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個人としては絶対主義を支持したい。
例えば、フッサールが言語の外に意味を見出そうとして失敗している。
(テリー・イーグルトン『文学とは何か?』より)
それが何を意味するのか。
言葉の外には何もなく、意味は言葉そのものであるのだと個人的には思う。
これを論証することは非常に難しいのかもしれないが、言葉と意味、そして真理の絶対性は揺るがないようにみえる。(直観としては)
多様性はあるが軸、つまり真理は揺るがない。
なにかを信じること、真理を追求することの意味を考えさせられる長編小説であった。
公開日2022/9/15