■株式会社河出書房新社
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つづきをよみおえた。
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感想
つづきから終わりまで、約6時間ほどの時間を再び費やすことになった。
主人公西村が何故原爆に関する本を意地でも出版しようとしたのか、最後のほうで明らかになった。
以下、ネタバレを含む。
・・・
西村は正義感がとにかく強い。
原爆の被災地を直で目撃した西村は、この歴史を絶対に人類の記憶から忘却させてはならないという意思を抱いていた。
後半でとある老人とぶつかり合う。
老人は絶対的な真理は無いと主張する。
いかなる戦争も、お互いにお互いの正義のもとにぶつかり合う。
正義というものは常に更新されていく。
ある種の「共感」がバイアスを生み、原爆被害者以外のことを君は忘れていると西村は諭される。
それでも西村は民間人の犠牲をどうしても不合理だと感じ、これが正義とは言えないと意思を曲げない。
これまで自己主張を控え、無口であった西村がついに怒りを露にした。
・・・
またしても相対主義の問題について考えさせられた。
絶対的な正義は無い。
とはいえ、いかなる価値体系も、その価値自体の真実を証明することはできない。
では歴史的に何が言えるのか。
核兵器の歴史はわずか100年である。
核の在り方をめぐっては議論が絶えず、歴史的なデータも希薄である。
人類は自殺をして終わりを向かえるのか。
そういう普遍的なテーマもひとつのテーゼとして本小説に内在している。
ここまで読んで感じたことは、ひとまず共産主義の失敗だけは歴史的な説得性を一定程度持っているということである。
現代の社会的価値観はやはり時代とともに変わりつつあり、産業革命期以降、世界的に見ても労働時間は減少傾向にあるのではないだろうか。
AIと労働や環境問題など、政治的話題には事欠かない世の中となっている。
物事は100年単位では分からないこともある。
歴史を知らずに政治を語ることができないという、ある意味では当たり前なことではあるが、やはり政治と人間の本質を知るためには心理学、社会学、哲学といった社会科学系よりも歴史のほうが重要性が高いように感じた。
公開日2022/10/23