■株式会社白水社
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日記
読書日記というものを地道に続けてはいるが、いつまでも自分のなかで進歩が見られない虚無感に時々襲われる。
学問の円環構造についてはある程度掴めた気はしている。
三島由紀夫が言うように、倫理を考えれば政治のことも自然と考えるようになる。
政治について考えるならば自ずと経済についても考えるだろう。
経済を考える場合、資本主義というものが持っている数々の良い面と悪い面について否応なく考えさせられる。
そして部分的に考察は心理学へと派生し、それを突き詰めれば哲学の領域にたどり着く。
しまいには認識論や実在論、文化相対主義といった、終わりの見えない議論に接近することになる。
そこで再び権力と接触し、政治に迂回する。
途中、科学についても寄り道するだろうし、科学について考えるならば数学、物理、化学、生物のフルコースを堪能し、進化論、天文学、生理学、脳科学といった最先端の技術に触れる。これが永遠につづく限りにおいて、やはり円環構造を成している。厳密にいえば銀河系のように、渦巻いていて、むしろ学問はそれぞれの領域で独立し、恒星と恒星との距離はますます遠ざかっている。
・・・
ウエルベックはそんな世界について、いたってシンプルに考えている。
世界を説明するにはそんなに多くの言葉を必要としない。
男というものは歴史的にも、欠陥であることは疑い無い、と。
女性は権力を必要としない。戦争も考えない。
こういう言説については、しばらく個人のなかでは拒絶し続けたが、今日のあらゆる状況を加味すれば、往々にして正しいのではないか。
ウエルベックは言う。
西洋人は生というものを利益と快楽からでしか引き出すことができなくなった、と。
『プラットフォーム』にはその世界観が大きく反映されているように思う。
海外 (欧米) もそんなものか、と思わずにはいられない部分がある。
ウエルベックは保守主義者とは自称しないまでも、左翼の胡散臭さを肌で感じ取っている発言が見られる。
オルタナは何処にある。
利害や動物的な欲望以外に生を謳歌できるものは何か。
それを文学が提供できることはできないのか。
文学は何がしたいのか。
おそらく文学は、何もできない。
公開日2022/11/18