■有限会社論創社
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日記
いままで自分は、水声社から出版された本を多く貪り読んできた。
本書は創業者、鈴木宏氏の自伝的なものとなっている。
夢中になり100ページほど読み進めた。
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人には野心が必要であるが、縁というのもまた同じくらい大事なものだと思うようになっている。
まだそこまで多くは読んでいないが、様々な人物の自伝を読んでそのように感じる。
例えば伝説の編集者と呼ばれている林達夫も、ある人物との縁がなければ岩波書店で仕事をしなかっただろうと思わずにはいられない。
また、関東大震災という偶発的な出来事にも左右されている。
これらを俯瞰すると、むしろ偶然という名の、ある種の必然的な縁の力が働いているようにもみえる。
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創業者自身は若い頃にフランス文学を貪り読んでいた話が語られた。
ミシェル・ビュトール、モーリス・ブランショ、ジョルジュ・バタイユ、ジャック・デリダetc.
半世紀以上経ってもなお、読み継がれる偉大な哲学・文学者の名前が連なる。
著者はマラルメが難解であったことを語るが、ブランショが「困難なものこそ唯一読むに値する」と語ったことを引用する。
分かりやすさは罠だ。
個人的には、読んですぐに分かる本は引き出しにしまってある記憶を単に呼び覚ますだけの装置に感じる。
とはいえ、モームは『サミング・アップ』のなかで、解明されたあとのマラルメの文章を遠回しに批判している。
内容があまりなく単に難しいだけという文章と、深いレベルで内容が重厚で、かつ難しい文章を見分ける力をつけたいと個人的には思う。
読んでいて面白い本であった。
公開日2023/1/2