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つづきをよみおえた。
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感想
前回は「資本主義の精神」まで語られた。
小室直樹によれば「天職」の本当の意味は英語でいうと「calling」に相当し、「神から与えられた仕事」であり、「仕事によって救済される」という精神と「複式簿記」が融合することによって資本主義が生まれたというものであった。
全てをまとめると長くなるので新しい気づきや知見を断片的に書き残し、最後に感想を書いて終わりにしたい。
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・単純には定義できない
当たり前ではあるが、本書は論文ではないので厳密な部分は省略されている。従って詳しい理解にまでは及ばない。しかしながら、複雑に絡まりあったコードをほどいていく作業を通して得られるものは大きいと感じた。
「民主主義とは平等を大切にする主義である」
試験でこのように答えたところで合格できるはずもなく、「何の平等か」「何によって保障されているか」「何のための平等か」と個人個人で問い、なっとくしていく他はない。
小室直樹は「機会の平等」を民主主義の「平等」として挙げた。換言すれば、「結果の平等」は民主主義ではない。それは貧富の差をなくす共産主義の発想である。
(ジョン・ロックの「社会契約説」に触れて) ”彼はたしかに、「自然人は平等である」と考えましたが、それはあくまでスタート・ラインの話であって、その後の働き方によって私有財産の違いが出るのは当然だと考えた。しかし、たとえ財産の違いがあったとしても、その人間たちが対等に社会契約を結ぶことによって国家を作った。その意味では、人民は平等なのだというわけです。” P278
そして小室直樹は「民主主義とは人民が政治に参加するシステム」だと述べた。
しかし、プラトンとアリストテレスなどの哲学者は民主主義は「衆愚政治」だとした。
プラトンは哲学者による「哲人国家」を構想したのはいうまでもない。
小室直樹はカエサルとヒトラーを例に出し、民主主義は独裁者の温床であることを説明していく。
民主主義が独裁者を生んだというのは歴史的事実である。
従って現代人は何故そうなったのか、悲惨な歴史を繰り返さない為にこれからどうすべきかを考えなければならない。
小室直樹は「平和主義者」の弱点を指摘した。
小室直樹はミュンヘン会談におけるイギリスとフランスの弱腰がヒトラーに「戦争に勝てる」と思わせたと述べた。
のちにキューバ危機を乗り越えたのはこのミュンヘン会談を研究し、論文に出したケネディ大統領の功績だと小室直樹は述べた。
戦争をしたくないと思っているだけでは隙を与えてしまうという教訓であった。
小室直樹は、平和をうたう憲法は日本以外にも数多の国に存在すると語る。
また、憲法第9条はケロック=プリアン条約のコピーだと小室直樹は述べた。
この条約が機能しなかったのはその後の第二次世界大戦が示した。
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その後は恐慌、ケインズの話が語られ、政府が経済に介入するようになったいきさつを小室直樹は語った。
と、ここまで書いてみてだいぶ長くなりそうであるので、部分的に割愛し感想を書いて終わりにしたい。
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三島由紀夫は天皇を「人間」に成り下げたことを大いに憂いたが本書を読んでまた一歩理解することができた。
伊藤博文は「宗教なきところに憲法はあり得ない」と述べたところに全てがつまっている。
日本人の行動様式「=エートス」を変えなければ欧米に支配されると当時の国の指導者たちは考えていた。
話を端折れば、そこで天皇がキリスト教の「神」の代替として機能したわけである。
(小室直樹用語でいえば「天皇教」)
しかし天皇が「象徴」となることによって戦前のエートスは見事に消え去り、デュルケームのいう「アノミー(無秩序)」状態に日本はなってしまう。
短期的には経済的に成長したが、長期的にはつづかないと小室直樹は見ている。
三島由紀夫は直感でこの今の日本を予測していたわけである。
端折りすぎて「議会」の本質までは書けなかったが、ざっくり書けば「議会における言論だけは自由でなければならない」というものであった。
これが権力で無視されると「ロッキード事件」になるということであった。
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最後に感想を少し書いて終わりにしたい。
小室直樹によれば、アメリカは契約社会で厳しい側面もあるが政治家は「公約」は絶対に守らなければならないという考えは持っているのだそうである。日本は「契約」に対する考えが弱いために政治家は公約を守らない、あるいは守れなかったとしても責任を引き受けないこともある。国民性によるのか、宗教という見えない力によるのか。
非常に考えさせられた。しかしこの複雑性から目をそむけてはいけない、自分の直感はそのように絶えず言っていたのであった。
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関連図書
小室直樹の本