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日記
小林秀雄の本に『考えるヒント』があるが、インパクトとしてはこちらの本のほうが考えるヒントになると思われた。
小坂井氏の新刊が出ているということで軽く立ち読みしてみたが、結局購入し、70ページほど読み進めた。非常に示唆に富む刺激的な本であった。
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アッシュ実験について、心理学者モスコヴィッシュの解釈が紹介された。
まずアッシュ実験とはざっくりいうと、サクラが用意され、そこにあるのは明らかに「青」であるがサクラが全員「緑」と発言することによって実験参加者が惑わされて「青」と答えてしまうというものである。
人の意見は多数派( ≒権威 )によって簡単に揺らぐ。それを端的に示したとされる。
モスコヴィッシュはアッシュ実験を整理した。その後に小坂井氏が補足する。
本書によれば、サクラを増やしても、三人目以降は影響力に変化はなかったとされる。
サクラが三人だろうが十人だろうが影響力は同じということであった。
また、サクラの一人が裏切りをすることによって影響力は格段に弱まることも示された。
小坂井氏は少数派の影響力に着目した。
少数派であっても論理に一貫性を持ち続ければ多数派に影響を与えることができ、多数派との衝突からどちらの立場にも収束しない思考が現れると語る。
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最近なぜかグレゴリー・ベイトソンの本が復権され始めているが(岩波文庫『精神の生態学へ』『精神と自然』など)、本書でもベイトソンについて触れられている。
ベイトソンはアナロジーに着目し、例えば結晶構造と人間の社会構造を一緒に説明できるような類の思考を求めた。
帰納法は「自然」に対して明らかに不向きである。
科学哲学者の村上陽一郎氏によれば、帰納法が原理的には不可能な論証方法であるという。帰納法できるのは氷山の一角の現象をつまみ食いし、それを根拠なく拡張することだという。それを帰納的飛躍と呼んだ。
それに対して演繹はすでに言ったことの一部をあらためて言い立てるだけなので絶対確実である、と述べた。
また、哲学的には帰納は「経験的」、演繹は「論理的」であるとされる。
頭でっかちというのは氷山の一角でしかない人間の有限な「経験」というものが、いかに薄っぺらいということの意味なのだろうか。
公開日2023/5/1