■株式会社大月書店
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その他数冊
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日記
『ユートピアとしての本屋』はなかなかに分厚く、ようやく半分は読み終えたといったところであった。
社会の在り方に疑問を持って、よく考え自分で本屋を立ち上げるというその行動と思想には端的に素晴らしいと思う。
自分も過去に「シェア本棚」に半年ほど籍をおいた。
夏から冬までの半年間、いろいろと学ばせてもらったが、自分で本屋を立ち上げるという行動には至れなかった。
その理由としては、古本屋でやるにせよ新刊書でやるにせよ、個人書店の場合、来店の客数が圧倒的に少なく、細々と質素に続ける自信がなかったからである。
白水社の『ブックセラーズダイアリー』も同様で、一日の来客数が10人未満もあり、多くても20人くらいという現実である。
そんななかでクレームや迷惑行為(万引きなど)に対応できる精神を保てるかどうか。自分は明らかに「No」であった。
読者は関口氏の本屋はどのくらいお客が来てどのくらいの利益率があるかは分からないにせよ、この本を読む限り、2017年からスタートし、既に3号店まで広がりをみせている。(1号店は閉店と書かれていた。)
その理由としては「ヘイト本は売らないし注文も受け付けない」という一貫した理念にあるからだと読み取れた。
その理念は学生時代に経験した、強豪校のサッカー部における理不尽な上下間系によって形成されたと語る。
自分も同世代の人間であるので、部活で経験した意味の分からない謎のルールには苦戦したが今では記憶にあまり残らないくらいどうでも良い出来事として記憶されてしまっている。
敢えてその文化に異を唱え、彼はその経験を修士論文で理論化したというわけである。
(ジョージ・オーウェル『一九八四』を分析したと書かれていた)
関口氏は問題意識が強く、本屋はどうあるべきか、言論とはどうあるべきか、道徳とは何か、といった広いテーマについて本書からいろいろと学ばせてもらった。
たしかに全ての書店が「私たちはヘイト本を店頭に置きません」と宣言すれば悪書はかなりの数減っていくだろう。
ヘイト本が書店に存在しているだけでも不快な思いをされる人が一定数いるという発想までは自分は持つことができなかった。
そして自分はそういった本をむしろ好戦的に、批判的に吟味してこのブログにも書いていた。
「嫌なら見るな、そもそも書店にくるな」という分かりやすい意見について。
これは明らかにナンセンスであり、ヘイト本が売り上げに貢献する以上、ヘイト本は需要に応じていつまでも存在し続けることになる。
しかしヘイト本の定義や存在意義を考える機会が自分にはあまり今までなかったと思われたので、この本をきっかけに今一度表現について考えてみたい。
公開日2023/5/16