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読書日記1042

         ウンベルト・エーコ『文学について』岩波書店 (2020)

■株式会社岩波書店

公式HP:https://www.iwanami.co.jp/

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その他数冊

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日記

『文学について』の「ワイルドー逆説 (パラドックス) と警句 (アフォリズム) 」の章では、文学上のレトリックの効果についていろいろと考えさせられた。

しかしエーコの独特な文体には参り、もう少し落ち着ける時間にゆっくり読みたい。

・・・

『池澤夏樹の世界文学リミックス』は本と本をつなげてくれる。

池澤夏樹という作家はとてつもない読書量である。この方から文学の世界がいかに広いか、いかに豊かなものなのかということを教えてくれる。

例えば今、『巨匠とマルガリータ』を少しずつ読み進めているが、本書ではその時代背景についても教えてくれ、この物語がロシア革命から10年くらい経ったソ連が舞台であるという細かい情報も提供してくれる。

この物語と『イワン・デニーソヴィチの一日』には共通点があり、両方ともソ連という国への意義申し立ての話であるという細かい知識も教えてくれる。

また「悪魔」という視点から見ればゲーテ『ファウスト』、トルストイ『イワンの馬鹿』、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』らの世界文学と比較することで、それぞれの文学者がどういう問いかけを行っていたのかが見えてくる。

新約聖書のなかにイエスと悪魔が対決する場面があるそうであるが、悪魔がイエスに対して3つの提案を行う。

「その石ころをパンに変えてみろ」

「お前は神の子だろう、それならば飛び降りても死なないはずだな」

「俺の手下になったらこの世界をぜんぶお前にやろう」

これらの提案はそれぞれ、「誘惑」「取引」「権力」が問われている。

これをまとめると「人間にとって自由とはなにか」という問いかけに集約されるのだという。

「悪魔」が出てくる文学には、物語がメタファーとして人間に対する問いかけが行われているのだろうと思われた。

ここまで解説してくれる池澤氏の博識には畏敬の念すら感じる。

・・・

『山上徹夜と日本の「失われた30年」』のつづきを読み進めた。

インセル(Involuntary celibate : 望まざる独身者)、ミソジニー(女性嫌悪)、フェミニズムとロスジェネ世代の連関についていろいろと語られた。

その中身について自分は特に思うことはなかったが、テクノロジーが発達する度に人間のネガティブな部分が公に出やすいように思われた。

その意味では人間に進歩などあり得ないと今日は感じた。

つづく

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