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日記
本書を読んで、宮台氏のいう「言葉の自動機械」とはウェーバーの「没人格」と同じことを指しているのではないかと思われた。
「言葉の自動機械」はおそらく宮台用語であり、社会学の用語ではないのでその定義は厳密には本人しか分からないので、できる限り本の文脈から推察するにとどまる。
本書では<世界>と<社会>の二項対立が頻繁に登場する。
本書の文脈に則せば、<社会>は言語によって成り立つ世界、つまり人間社会のことを指す。<世界>とは自然界の全てであり、宇宙も含むこの世の全体である。
宮台氏の文章はパズルのようにあらゆる論理が組み込まれているので、要約しようとすると「いや、厳密にはそうではなくこうではないか」と突っ込みが入る余地を与えてしまうので、要約せずに自分で思ったことを書き残す。
一日で理解することは到底不可能で、何回も噛むことによって味わいの出るようなものである。
・・・
宮台氏は、近代の合理化によって手続主義があらゆる領域(会社、学校、病院など)に広がり、「鉄の檻」となることは『崩壊を加速させよ』で説明した。
改めて「合理的」の意味を調べた。
「目的があって無駄がない」
この「無駄」というものがポイントだ。会社では無駄を嫌う。利益が第一なので利益に繋がらない行為が排除されるのは当たり前である。
ではいかにして無駄を減らすか。効率化、簡略化、従って合理化。
要するに「計算可能性」の話に集約される。
何をもって効率化されたか、合理化されたか。それを判断するには何らかの数値化できる尺度(時間、エネルギーなど)が必要である。
よって合理性は「定量可能なもの」に依存する。
科学の発達によってあらゆるものが定量可能になった。(人口、気温、物体のスピード等)
よって「合理的な社会」が誕生した。
そのような理解でいいのではないだろうか。
宮台氏がいう「損得マシーン」はたしかに合理化された社会の「副作用」のようなものだと言える。
統計的な手法を用いれば、計算であらゆる人間の営み(ギャンブルや恋愛でさえも)がある程度「予測可能」になる。
結婚もまた「生涯賃金」や「平均寿命」など、実は無意識に「この人と一緒に暮らすとどうなるか」が計算される。
それが良い悪いかは一旦判断を括弧に入れる。
ひとまず宮台氏はそんな計算可能で合理的な社会を「クソ」と呼ぶわけであるが、自分はウェーバーの「没人格」が「ロボット」と等価なのではないかとみている。
入力をすれば出力される。
Aを押せばBが出てくる。(計算可能)
「言葉の自動機械」というのはおそらく「言葉を話すロボット」である。
電車でタバコをふかしている兄さんに「やめなさい」(=入力A)と言うと「なんだてめえ」(=出力B)という決まり文句が返ってくる。
宮台氏のレベルまでいけば、もしかすればあらゆる生活シーンにおいて、入力に対し、「出力のパターン」が見え透いてしまうのかもしれない。
そのつまらなさ、人間らしさが消え失せ「ロボット」と化した点にうんざりしているのではないかと自分には思われた。
コンビニ店員はおそらくマニュアル通りに働く。それが義務であり職務なのだから。
ただそれが社会学的には近代化による現象であって、人類史的には一過性のものだ。
宮台氏このような背景について、「メタレベルで意識してほしい」という思いが読んでいて伝わる。
公開日2023/6/21