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新・読書日記109

         ウィリアム・フォークナー『エミリーに薔薇を』中公文庫(2022)

■株式会社中央公論新社

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    デイビッド・モントゴメリー (著), アン・ビクレー (著)『土と内臓』築地書館(2016)

■築地書館株式会社

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      トーマス・ベルンハルト『推敲』河出書房新社(2021)

■株式会社河出書房新社

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公式X(旧 Twitter):https://twitter.com/Kawade_shobo?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor

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日記

通勤時間、帰宅時間帯は『推敲』のほうを読み進め、カフェで残りの二冊を読んだ。

同じ作家だから当たり前かもしれないが、『推敲』は、『消去』と文体がとても似ている。呼吸が似ている。

いろいろな作家から独創的だと言われているベルンハルトは、自分から見ても、細部にわたって独創的であった。ほかにこのような書きかたをする作家を自分は知らない。ただ独創的なだけでなく、ところどころに挿入される精神的な話もまた箴言めいたものが多くメモを取りたくなる。悪書に対する罵詈雑言はとてつもない。「精神の産業廃棄物」という言葉に、ベルンハルトのいろんなものが詰まっているように感じる。

  

・・・

短編を読む時間がなかったので、『エミリーに薔薇を』に収録されている、中上健治による「フォークナー衝撃」を読んだ。ガルシア=マルケス、バルガス=リョサ、トニ・モリスンなど、様々な作家に多大な影響を受けているのが、中上氏からすれば読んでいてわかるとのことであった。

立ち読みで沼野充義氏による『徹夜の塊3 世界文学論 』も少し読んだ。

文学への軽視が政界の失言などに表出していると書いてあった。そして私たちは、フォークナーや多和田葉子氏などの研究をしていかなければならない、といった主旨のことが書いてあった。フォークナーに関する言及は様々な本で見られる。『響きと怒り』が途中で止まってしまったので、また再開したいと思いつつも、今は『推敲』を読みたい気分になっている。

  

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『土と内臓』のつづきを読んだ。100項くらいまでは進んだ。

ミミズが作物にとって非常に重要な存在だということを学び取ることができた。

  

微生物の役割が分かってない時代の農作は試行錯誤の連続であった。

見えない世界の力はやはり偉大であった。

  

害虫や細菌などに警戒するあまり、農作家は殺菌剤などで結果的にミミズを死滅させてしまい、自然の円環が損なわれて不作に終わってしまう。そういう歴史的なエピソードが語られた。

木を見て森を見ず。この言葉がとてもよく当てはまる例だと感じた。そして、今日あらゆる社会問題もまた木を見て森を見ずの例が多いのだろうと察する。

  

メモ

“しかしどこに位置しようと、地球のあらゆる場所で共通していることが一つある。土壌は双方向のパイプであり、それを通じて、私たちが見ることができず、よく知らない地下の世界が、日頃見慣れた地上の世界へと流れ込んでいるのだ。” P80

  

“植物が根や葉を作るために大量に必要とする元素は三つ、窒素(N)、カリウム(K)、リン(P)だ。” P83

  

“微生物は土壌にある腐敗性有機物由来の窒素を、水溶性のアンモニウムや硝酸塩に戻す。無機化と呼ばれるこのプロセスで、植物が窒素を土壌水分と共に吸い上げられるようになる。植物がどのように窒素を得るにしろーーー共生菌からであれ土壌有機物の循環からであれーーー微生物がプロセスを主導しているのだ。” P89

  

・・・

地球の総重量は宇宙になにかを飛ばさない限りは不変だと考えられる。つまり、執行草舟氏のいう、酸化思想(=科学至上主義は、すべてではないにせよ物質を次から次へと還元不能なプラスチックや核燃料ごみなどに変換するプロセスと言える。一定の割合で、年々、自然の循環のわくから「はみでる」物質が量産されるということを考えると、これは相当な技術が開発されないと未来の地球はかなり住みにくい環境になりそうである。

すでに私たちは年間、相当な量のプラスチックを魚などから食べているらしい。

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