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読書日記1121

      トム・ルッツ『無目的:行き当たりばったりの思想』青土社 (2023)

■株式会社青土社

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日記

目的というものを設定すると、活力の源泉は半ば義務的になる。

何故目的を設定する必要があるのか?そこを問う。静かに、ゆっくり考えるとそこには人間の脆弱性が垣間見える。

目標を設定するということは、言い換えれば目的のために遂行すべき内容を「言語化」するということである。ToDoリストを思えばすぐ分かるのは、人は基本的に情報処理能力がないということである。なにをすべきか言語化しなければその行動ができない。だから分散する情報を一点にまとめる必要が生まれる。これは突き詰めると、非自発的であって、つねに自身のすべき行動を参照するわけである。

言語化され、その表示、情報から絶えず何をすべきか引き出さなければならないという状況がそこにある。

敢えてややこしく書いてみたが、実際そうではないだろうか。

行動というものが外部から強制され、半ば義務化されている。

本書はそこを突いているのだと思う。

そこには外部からではなく、「内部」から生まれる活力がない。

「あれをやってみよう」

突如思い付くその自発性が削がれるということである。

行動が義務的なものにはないエネルギーである。

この本にはそのエッセンスが詰まっていて、「無」から「有」への飛躍というものが持つ性質について書かれている。

非常に言語化しにくいが、この本には能率、効率を求める環境・社会で見逃されている人間の側面について書かれている。

目的がないからこそ生まれる行動には打算がなく、肯定的でポジティブである。

効率主義へのひとつのアンチテーゼとして、疲れた週末にはもってこいの本であった。

公開日2023/8/28

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