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+数冊
つづきをよみすすめた。(読書日記1125に収録)
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日記
『精神の生態学へ (中) 』は220ページまで、『ゲーデルの悪霊たち』は110ページまで読み進めた。この二つの本は非常に奥の深い場所で繋がっているということを思わせる、重厚な内容となっている。読み進めていくうちに時間を忘れるほどに夢中になっていく。
『デカルトからベイトソンへ』のなかではベイトソンの学習理論について論じられるが、いよいよ中巻ではその具体的な話が論じられているように感じた。
ベイトソンは人類学と社会科学の知見、研究方法を精神医学へと応用させ、「コンテクスト=文脈」に着目することで統合失調症の原因や解決方法を探っているように自分は感じた。
どこかの本で書いてあったが、重厚な本はまず小説のように読み進めて全体像を把握するほうがいいとのことである。
自分もそう思っている。一発目から精読するとしても、だいたい徒労し、読み通す気が失せるものである。
帰り道で今日の内容を概ね整理できたように思う。
二人の共通点は数学に世界の読解可能性を感じていることにある。
ベイトソンはトラッキング実験(詳しくは割愛)に関して以下のように書いている。
“数学的記述という純粋に人工的な操作に見えるものと、人間の脳に組み入れられた特性との間に呼応関係が現れるという発見は、非常に魅力的である。” P186 (『精神の生態学へ (中) 』)
ざっくりまとめるならば、これは心理学のある実験で、数学の不連続性によって学習成果にも不連続性が現れるということを示した実験である。
ベイトソンは学習機能と統合失調症、ダブルバインドの3つが関連していることを示唆する。
“人間とは、不連続なレベルが積み上がった構造のなかで学習し変化していく、そういう特徴をそなえた動物であるに違いない。そうでなければ、ダブルバインドによるフラストレーションから統合失調症になっていくことはありえないはずだ。” P185 (『精神の生態学へ (中) 』)
示唆しているとはいえ、フラストレーションから統合失調症への飛躍が何故起こるのか。そういうところまでは読んでいてもさっぱり分からなかった。
200ページあたりからは進化論と創造性の話へとシフトしていく。
ここからは学習理論と進化論が結合されていく。
統合失調症と遺伝の関係について論じられているが、形而上学のような話も含まれていて、さすがに一日では吸収しきれなかた。
しかしこのあたりは本書のなかでも最も中核的な部分であるように感じた。
ベイトソンは「コンテクスト」という抽象的な概念が、科学と倫理学を統合し得る概念になれる可能性についても示唆した。
このあたりを読み終えたときにゲーデルの本にシフトすると、数学の可能性、科学の可能性について肯定的な見方ができた。
以前、このブログで哲学者ヒュームの言葉などを吟味しながら何度も書いて考え、事実と価値の間にある深い溝を突きつけられた。理系の分野は事実に対する説明を行うが、価値観にまでは及ばない。それでも心の哲学や脳科学の領域は数学の力なしには成り立ち得ない。
ゲーデルの無意識に対する考え方は非常に示唆的なものであった。
個人的な印象としては、現実を説明するのは物理学であり、数学は抽象性が強い。
111項では、説明のつかない「創造力」や「無意識」は高度な数式の表象である可能性が示唆された。
長くなるのでひとまず以下の部分だけをメモした。
“数学的な対象および事象は、客観的に、そして我々の精神的活動や我々がすることのできるあらゆる意志決定とは独立して存在する、ということである。” P110 (『ゲーデルの悪霊たち』)
“我々が対象を、無意識の仕方で、つまり意識すなわち自我が到達できない我々の精神のある部分の中で、作り出したということもありうる。すると、創造したのは、実際のところ我々、つまり自我というのではなく、むしろ、我々が制御していない、実際のところ我々ではない、そのような我々の中のあるもの、ということになる。したがって我々の対象はここでもまた、ある実在に結びついているということになる。我々すなわち自我から独立した、無意識である。” P111 (『ゲーデルの悪霊たち』)
ここまで一貫して言えるのは、これまで見てきた分野の全ては数学の力で支えられているという事実である。
文理の統合には数学が欠かせないのは明らかである。
その数学の分野である論理学の頂点に立ったゲーデルの発言は重い。
公開日2023/9/2