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読書日記1164

      カント『道徳形而上学の基礎づけ』光文社古典新訳文庫 (2012)

■株式会社光文社

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その他数冊

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日記

『実力も運のうち』を読み終えたあと、やはりアクセル・ホネットをもう一度読まなければ、と思った。約2年前にもアクセル・ホネットを頑張って読んでいた時期があった。

https://nainaiteiyan.hatenablog.com/entry/2021/11/17/222540

  

道徳について興味が湧いたころにジュンク堂に通い始め、功利主義やら厚生主義やらと、アカデミックの世界について無知だった自分は世界の広さを知ることになった。

原点は精神科病院で働いていたときに感じた矛盾であった。

新型うつ病に対する偏見があったり、しかし実は本音ベースでは真っ当な意見だと感じることもあったり、患者と病院の共存関係など、考えればキリがない問題が自分の心のなかに沈殿物のようにたまっていた。

そしていろいろあり、2020年の夏くらいからドトールに通い始めた。当時の力ではアクセル・ホネットの承認論はあまりにも難しすぎた。今でもそうかもしれない。

そのあとに美学や芸術、倫理などに興味が広がり、これらはカント「無目的の合目的性」という概念によってひとつの線として貫通することになった。

定言命法について、当時は言葉と意味しか知らなかった。

今でも無知ではあるが、なぜ定言命法という原理にたどり着いたのか、今日それを追うことができた。

カントによれば、単に人間はその欲望が満たされるためだけに生きるとするならば、そもそも本能だけがあればよくて、理性はむしろ邪魔になると考えた。なぜ理性があるのか。それぞれの器官はそれぞれの役割、目的を持っている。であれば理性にも目的は備わっているはずだ。であればそれは野蛮状態から脱し、秩序ある世界に向かっていくための機能ではないかと予測を立てた。考察の進め方がうまいと感じた。

そして理性が従うべき原理をカントは模索する。カントは、理性は意志を指導する能力はないと考えた。「意志=やる気」と考えれば納得できる。やる気はゼロから自分の力で生み出すことは難しく、こういうものは気分転換をしたり寝ることで出てくる。つまり理性はやる気を出す準備をしてあげることしかできない。好きになれない人を無理矢理好きになろうとしても内から沸き上がる情動まではコントロールできないから好きになれないのと同じ原理だ。

カントは、理性の真の使命は「それ自体において善であるような意志をもたらすこと」と定義した。意志を自分で定めた法則に従わせ、その法則だけに従って生きることを提唱する。重要なのがその行為の結果を問うことは許されないというカントの言葉であった。

ここでようやく腑に落ちたのが、現代の政治哲学においてはカントの義務論と功利主義のどちらかに分かれるという、どこかの本で読んだ内容を少し理解できたことであった。功利主義は結果を重視する立場にあるので(=帰結主義)、カントとは相容れない原理である。

・・・

書きながら今日読んだことを整理していくと、まだまだ点と点が繋がらないことを痛感。何回も読むに値するのはやはりこういう本だなと感じた。

・・・

『格差という虚構』は『実力も運のうち』の議論を根底からくつがえす破壊力を持っている。

二回目の読解に入ったが、小坂井氏は「格差を正当化するために能力という虚構を社会がつくる」と冒頭から書いている。そしてマイケル・サンデル氏はそこに気づいていないとも書いている。

「カントの義務論 / 功利主義」のような、水と油的な二項対立の図式は、もしかすれば他の議論にもいろいろとあるかもしれない。今で言えば「小坂井氏 / マイケル・サンデル」のように。

こうやって切り口を増やしながら様々な視点で読めるのが多読の醍醐味だと改めて感じる。

そして『東大生、教育格差を学ぶ』のような第三者を混ぜていく。

すると触媒に触発されて化学反応を起こし、新たな物質が誕生するように新たな知見というものが生まれる。これが読書の楽しみではなくていったいなんなのだろうか。

つづく

公開日2023/10/9

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