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筒井康隆『虚人たち』中公文庫 (1984) 読了

           筒井康隆『虚人たち』中公文庫 (1984)

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感想

読点がない。改行がない。雑念なのか妄想なのか幻覚なのか夢なのか分からない思考の断片が永遠に連鎖してく。筒井氏の小説に読み慣れていない自分には最初から最後まで訳の分からない小説であった。換言すれば、要約の不可能性を感じさせる小説であり、その点においては卓越した独創性を持っていると思うのだが、トーマス・ベルンハルト『消去』も同じようなことをやっているので幾分かは独創性が薄れるはするものの、著者は従来の小説の形式から自由であることに重きを置こうとしたと思わせるこの様式は確かにオリジナリティ溢れる作品だと思われる。自分も敢えて模倣して改行をしないで感想を書いているが、これは読みにくさ極まりないのは間違いない。何故敢えてこんなにも読みにくい表現形式を選択したのか。思うに、これは真の読者というものを峻別しようという企みがある。左から右へと抜けていくような作今の小説界隈とは対照的に、確かに高尚とも思えるほどの文章表現がこの小説に散りばめらている。この本の解釈を敢えてしようとは思えないが、左から右へと抜けていくものばかりを読んでいて何も残らないくらいならこの本を読んでみてもいいのではないだろうか。忍耐力、集中力、気力。読者は試されている。こんな小説を読んでいったい何になるのか?そんな問いはナンセンスだ。『虚人たち』は文学者であることを自覚している者、もしくはそう認められた人間からのメッセージとも、もしくは挑戦状とも受け取れる。だから自分は敢えてこの小説に真っ向から向き合ってみたのであった。

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