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阿部恭子『高学歴難民』講談社現代新書 (2023) 読了

        阿部恭子『高学歴難民』講談社現代新書 (2023)

■株式会社講談社

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日記

今月の新書は学歴に関するものと発達障害に関するものが多い。

・『高学歴難民』講談社現代新書

・『ルポ 高学歴発達障害』ちくま新書

・『職場の発達障害』PHP新書

個人が抱えるなんらかの生きづらさや困難が、本を通して社会への認知・理解となればいいのであるが、こんなにもいっぺんに同じようなタイトルが棚に並べられていると「高学歴なのにこんなことになっているなんて、世も末だな」と思ってしまった。

読んですぐに売れば500円で読めるので読むことにした。

・・・

内容としては玉川大学出版部『文系大学院をめぐるトリレンマ』の簡略バージョンのようなものだと感じた。

文系は労働市場に評価されにくい点、新卒というシステム的な問題点、大学院教員の非正規問題など、いろいろな問題が複雑に絡み合っているなか、本書では雇われる側(いわゆるポスドク、オーバードクター)で苦しむ人たちに焦点を当てている。

全部に目を通したが、これらを「自己責任」と片付けるのは早計のような気がしてしまう。

ロスジェネという言葉があるように、また、氷河期世代を対象にしたいろいろな雇用対策が普及していることから鑑みれば、ある程度は時代や環境というものがいかに人生において大きな影響を持つのかが社会的にも認知されているだろうし、当事者の被った理不尽な仕打ちというものも想像できる。

それでも一定数は他の世代と比べても問題なく安定している人がいる。

大局的に見れば、それぞれの世代はそれぞれの困難を抱え、それぞれでやっていくしかないということも言える。

このあたりは自分は何も言えない。読んでいていろいろと考えさせられた。

もし自分がロスジェネ世代であったとしたら不安に思うのも当然だ。

それでもなお、敢えて何故不利になると分かっていて修士課程、博士課程を選択したのか。

「就職したくないから」

これは逃げであって、こういう類いの愚痴には共感できなかった。

こういう人間は何のために何を研究するのだろうか。

本当に価値のある研究をしている人たちに失礼ではないだろうか。

本当に価値を生み出せる研究をしていれば必ず何かの形で自分に返ってくる。

小室直樹という偉大な社会学者もルンペンであったし、本人はルンペンでなにが悪いと横山やすしに威張っていたくらいだ。

小室直樹はあまりにも天才過ぎてのちに売れっ子となってルンペンから脱出することができた。

理不尽な場面で何を生み出せるか。何を貫けるか。

そういう気概のようなものが本書の登場人物には感じられなかった。

公開日2023/10/26

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