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日記
『教養主義復権論―本屋さんの学校2』を再読。去年の1月頃に読んでいたのでだいぶ久しぶりに本書に触れた。
第一章はカント研究者(浜野氏)とアーレントに詳しい仲正教授が、それぞれの思想(カントとアーレント)の共通点である「ヒューマニズムに対して批判的」な点を掘り下げるという内容で進んだ。
人間の理性は徐々に完成へと向かう「進歩史観」に対して、アーレントは「それはまずい」と考えていたことが仲正教授によって説明された。
そもそも理性が完成するための条件というものもいまいちハッキリしない点もあるが、一番気がかりなのは「現在地球上に存在する人類はその完成へと向かうための「手段」に過ぎない」ことの表明でもあるからである、と説明された。
プラトンの時代は印刷技術が進んでいなかったため、人々は「言論の広場」へ集まって意見を共有していた。
プラトンの本を読むと、ソクラテスが誰かと論争しているのが常である。(相手はゴルギアスであったりプロタゴラスであったりテアイテトスであったりする)
しかしグーテンベルク以後、印刷技術の発達によって雑誌や新聞が「言論の広場」の代役を担うことになる。
ソクラテスが戦った言論空間は紙に置き換わり、論争は音声(話し言葉)からエクリチュール(書き言葉)へと変化した。
それによって議論の正しい在り方が問われることになる。このあたりはコミュニケーション理論の先駆者であるハーバーマスの研究に詳しい仲正教授が予備知識をうまい具合に、必要な個所だけ抽出していた。
専門的な議論は論文ベースで行われるため、やりとり(専門的な意見の交換)に著しく時間がかかるという制約を現代社会は抱え込むことになる。ソクラテスの時代はその場ですぐに交換ができた。
従って、反論する側は文章が短めでピンポイントで攻めるという慣習を招き、書き手は予想される反論をあらかじめ論文に盛り込む必要性が出てきた。
一般読者は論文を追うことは難しいので、本なり学術雑誌で先端の議論を確認しなければならない。
かくして情報に非対称性が生まれる。このことを考えると、普通に想像すれば素人でも人類の理性が完成に向かうとは到底思えないところである。こういう問題をアーレントは生涯探究し続けたと仲正教授は説明していた。しかしカントはあまり政治に関する本格的な論文は書いていないということである。
カントはひとつの難題にぶちあたった。
自由意志と責任に関する問題を『実践理性批判』で考察されていると説明されたが、自由意志を認めるとややこしい問題が発生するので困る、ということが分かった点でストップしてしまったと説明された。
よって『判断力批判』は道徳に関する考察なのではないか、というのが仲正教授の見解であった。
久しぶりに読み、最初に読んだときとは恐らく印象も変化したように思う。
自由意志と責任に関する問いかけは矛盾にぶち当たるのが常だ。してみると、宇宙の果てから見れば人間もただ機械的に、昆虫と同じように振る舞ってみえるのではないか。そう考えると、意識というものは特段、特別なものでもないような気がしてくる。しかし自分の存在について考えるのは人間しかいないだろうと思えるのもまた事実であり、これはいくら考えてもやはり堂々めぐりを繰り返すというジレンマにはさまる。
・・・
『有害な男性のふるまい: 進化で読み解くハラスメントの起源』
200項ほどまで読み進めた。
10代後半の頃に読みふけった恋愛工学を思いだす。恋愛工学はふざけた本だと思っていたが、今思えばやはりある程度は妥当な推論、妥当な戦略だと言える。(ここでは倫理性は問わない)
進化論の話はコストだとか、戦略だとか(マキャベリズム)、打算に関する話が多く、個人的にあまり読む気がなくなってきてしまった。
また、200項までの内容は概ね恋愛工学の理論を進化論の枠組みの理論に翻訳し直して説明された感が拭えない。
メモ
“では逆に、相手を過剰に支配したがるのはどのような男たちなのだろうか。配偶価値が低い男性、というのがその答えだ。” P159
⇒余裕のある男性は女性にいちいち干渉しないという、恋愛工学のテクニックに見事に当てはまる具体例のひとつ
つづく