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感想
文春砲という言葉が文藝春秋のイメージを若干悪くしているように見えるが、創始者の菊池寛という人物に、自分は人間としての温かさ、豊かさ、寛容さを見た。ネガティブで悲観的なところもあったが、全体的に見て好印象を抱いた。
横領が発覚して、解雇した人間から仇討ちを食らってもあまり動じず、「なんだあいつは」と怒るような素振りを見せずすぐに散乱した事務所を片付けるように指示したところ、良くも悪くも部下を完全に信頼しているところ、最後まで出版だけに人生を捧げたところ、全部含めてやはり好印象であった。
表紙のイラストは足を組み、片手にタバコをもっている姿がどことなく厳つい印象を受けたが、最後まで読むと印象はだいぶ変わった。
久々に読み終わってスッキリした小説であった。
読み終わって泣くような感動的な話だとは思えなかったが、人間としての温かみというものは最後まで感じ取れた、良い本だったと思えた。
おしまい
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読書日記1319
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その他数冊
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『謎床』
ドミニク・チェン氏と松岡正剛氏の対談を読んでいるうちに、情報と生命について考えることが楽しくなってきた。
「知っている」ということはどういう状態を指すのか?
科学を突き詰めると、99.9%は仮説に過ぎないという話はよく聞く。
ニュートン力学で説明不可能だったものは、アインシュタインの相対性理論によってもう一歩踏み込んで分かるようになったが、まだ完全とは言えない現代科学。暗黒エネルギーの解明はあまり進んでいないように見える。ひも理論も自分は一度かじったが、まだ仮説にすぎないのかもしれない。新しいパラダイムが到来すると知は更新される。
すると、「知っている」ということは、実は曖昧なものであると分かってくる。
“理解してしまうということに対していつしか恐怖を覚えるようになりました。そのういち「何かをわかった」、などという事実は本質的に存在しないんじゃないか、と思えるようになった。” P65
ドミニク・チェン氏は以上のように語った。
松岡正剛氏も、4つの学を諦めたと語った。
鉄に関する学、尾に関する学、恋に関する学、夢に関する学。
現代の科学力をもってしても、分からないことが膨大にある。
それはそれで面白くてけっこうじゃないかと思えた。
メモ
“結局、コンピュータはロジックの回路として積み上げるしかないので、「クレタ人はうそつきである、とクレタ人は言った」というパラドックスを与えた途端、停止してしまうんですね。” P105
グレン・グールド「最もすばらしい芸術はよく練られた逸脱の様式である」
・・・
『崇高と美の観念の起源』
160項までたどり着いた。
そろそろ読み終わるかもしれない。
内容的には何を言っているか分からない箇所がありながらも、ゆっくり読めばなんらかの気付きを与えてくれるような本だ。
ここまで読んで、自分は個人的に興味のあるえんぴつアート問題をもう少し先へ進めた。
(「えんぴつアート」で検索して出てきた記事はこちらに)
バークは、趣味が知識の量と無関係ではないことを書いていた。
自分は、この法則は部分的に「美」を感じるかどうかに関係あるように思えた。
例えばフィボナッチ数列を知っているからこそ感じられる「美しさ」というものがあるように自分は思う。
その美しさを小学生、もしくは幼稚園児が感じることができるだろうか。難しいのではないだろうか。
逆もありうる。
何も知らないからこそ感じることのできる「美しさ」というものもあるかもしれない。
そういう場合、「快」というものが関係しているように見える。
年を取るごとに、次第にいろいろなことに慣れていき、幼い頃に快適に感じていたものに鈍感になることは間違いなくある。
一方で、夕焼けなど、知識とは無縁と思える美しさもあるように見える。
これが美学の深みだと自分は感じた。
今日はそこまで深いことは考えることができなかったが、えんぴつアート問題を突き詰めると新しい発見がありそうな予感はした。
美学は別の学問の知見が適用可能なことが多いので(数学、哲学、倫理学、進化論など)、今後も幅広く見識を深めていきたい。
つづく