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日記
サルトル「文学は飢えた人間の前で役に立つのか」といった問いに大江健三郎が本書で応答していた。
「もう語るのをやめてくれ」
文学を極限状態という、非常に例外的な状況におくことで無益であることを曝そうとするように思えたのだろうか。
大江健三郎は文学が無益だと思うことも、有益だと思うことも退ける。
なぜ書くのか。
文学が目的でありながらも、無目的であるという曖昧性について大江健三郎は語っていたが、曖昧というものを自分が肯定的な言葉として捉えることが出来たのはサルトルのおかげなのかもしれない。
“人生において人間が幸福だとか不幸だとかのために、人は小説を書くのではない。” P6
“作家が、書くことに酒や煙草よりも重きをおくのは、書く行為がこれらよりもっと大きく確実な幻影をあたえてくれるからである。” P9
“小説を書きつづけることによって、なにごとか狂気めいた暗く恐ろしいものに対抗しつづけること、もしそれを中止すれば、《白状した》人間になるほかないであろう。” P16
メモ
初めから何もかもが見透かされ、計画されているような実利的で、即物的な行動をとる人間が文学をやらないのは、あるいはやらないと思えるのは、不確実で曖昧なものにこそ人間性が宿る、あるいは宿っているということが分からないからであろう。
『ソクラテスからSNS: 「言論の自由」全史』
メモ
“ソクラテスの裁判は、民主主義にとって最も大きな価値があるものーーー言論の自由ーーーが実は最も壊れやすいことを証明していると考えられる。” P31
ストライサンド効果・・・「消して」と訴えることによって余計広まる効現象
民主主義こそが逆説的に言論が壊れやすいということは、古今東西あらゆる歴史が証明しているのではないだろうか。日本の報道の自由度が想定的に低いことはその延長線上にあるように思えてならない。
流れてくる情報の優先順位は資本によって、あるいはイデオロギーによってある程度序列が決まっているのだから。