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■株式会社 みすず書房
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日記
今日もふりかえると、だいたいいつもの休日と同じように読書と散歩の繰り返しだったように思う。
慣れてはいるが、バカみたいに長い9連休の三日目、さすがに今日ばかりはなにか他のこともやってみたいと思いつつも、じゃあなにか他に何をやろうかと考えてはみるものの、どこへ行ってもだいたい人は沢山いるしと分かるとやっぱり今日も同じような感じでいいやと落ち着いていく。いつものパターンとなる。
今日は7年前に暮らしていた場所を散歩した。
あの頃は本棚がしょぼかったなとか思い出しながら、あの頃の意味の分からないくらい辛い暮らしと今を比べると、まあ今の方がいいかなと思いつつ、でも能力的にはそこまで上がってもいないので結局根本的には何が変わったのだろうと問いつつ、てきとうに歩いた。
公園で読書をしようかと思ったが、ノートが取りにくいというデメリットを直感で感じ、やはりカフェしかないなと分かると電車に乗り込む。
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『人命の特別を言わず/言う』
ピーター・シンガー『新・動物の解放』と一緒に読むにはこの本がベストのように思う。
「本は同時に三冊読め」といったタイトルの本があるが、ピーター・シンガーと一緒に読む本のリストには絶対に立岩さんの本を入れるべきだと常々思う。
“このような主題を相手にするべきなのだろうかと思う。この種の議論に入り込むこと自体がなにか罠にはまっているような感じがする。” P27
明らかに立岩さんはピーター・シンガーの意見とそりが合っていない。むしろ議論を避けようとしているくらいで、この言葉にはピーター・シンガーの主張がいかに立岩さんにとって奇妙に思えたのかを端的に表していると感じる。
“第一に、生物を等しく扱うべきである、すくなくとも自らの種以外の種についても生命が尊重されるべきだろうという考えは、人間が考え出したことであり、人間が言っていることである。他の動物たちがそんなことを言っているという話を知らない。” P35
立岩さんは、ピーター・シンガーがどれほど動物の幸福について考えていようが、やはり人間が勝手に考えていることに過ぎないという疑問を提示する。
ピーター・シンガーに言わせれば「現場に行って動物の苦しみを見てこい。話はそれからだ」となるのかもしれない。
事実と価値が水と油のような関係にあると改めて思い知らされる。
どれだけ動物が苦しんでいるという事実を提示しても、そこから導かれる価値(判断)とその事実は独立している。
自分はいまだにヒュームの法則を崩せる論理を持っていない。これからも持てないだろうし、ヒュームの法則を覆すような凄い意見が哲学界から出てくるとも思えない。
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『皮膚、人間のすべてを語る』
菌の話がいつの間にか終わってしまい、この本に対する情熱が若干失せた感じがある。
それでもちまちまと読んでみることにした。
“それに、私たちは多かれ少なかれ美容業界に洗脳されており、値段が高いほど、あるいは見た目にインパクトが大きいほどよく効くと考えてしまう。実際のところ、安価な保湿剤クリームの効果はアンチエイジングをうたう高価なクリームとまったく変わらないという研究結果もあり、効果は値段と比例するといった考え方は単純に正しくない。” P124
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『バンヴィルの本棚』
メモ
(ハイデガーを批評するスタイナー)
“今日「存在」という語は空疎であり、かつてのように存在を喚起したり提示したりする力をもたないが、それは言語全般が疲弊していることの反映である。” P170
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『唯の生/良い死』
メモ
“さきに歴史があり連続性があることを見ておくべきだと、またそれが忘却されているのはよくないことだと述べた。これはそのことも関連する、この件に限らず、実践的な教養というものの多くに見られることだが、あるべきこととそうでないものとを、時間や空間の対比において語ることがよくなされる。例えば、語られることがない(から私は語る)という語りは繰り返し語られている。存在してきたものを不在であると常に言うなら、常に忘却の行いを営んでいるということである。そのことによって、これまでの(よからぬ)不在を脱して、あるべきものをこの世にあらしめようという言説が繰り返され、それがその通りに受け取られるなら、一定のもっともらしさをもつことになる。” P74
自分で選択すること、自己決定について
“各自の価値・選好が、社会の中で形成され、社会に規定されるのはむしろ当然のことである。それでもやはり自己決定と言えるはずだ。これは間違えられやすいところで、だから幾度も同じことを述べてきたのだが、社会的な価値であること自体から、その価値がその人の価値でないとはならない。” P120
立岩さん本を読むと、どれだけ物事を考え続けて来たのかということを思い知らされる。
文章が非常にスッキリと整理されて整合性がしっかりとしている。この本は600項弱もあり、その量を書くだけでも相当骨が折れるはずなのであるが、質も驚くべき高さを感じさせられる。
読みながら、よくここまで考えるづけられるなと、社会学者の精神を前に自分はいったい何をしているんだと少し思わせられながらも、自分も立岩さんと似た分野で仕事をしている以上、こういった問いかけを日々忘れずに継続していきたいと思う一日であった。