
■株式会社光文社
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■株式会社講談社
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■株式会社筑摩書房
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日記
『未来のイヴ』を最後まで読み終えた。
クライマックスはひねりにひねりを加えた、ちょっと驚きのある最後であったというよりかは、むしろ最後の最後で自分に問いを突きつけられたようなーーーただその問いが深く、かつ複雑でとらえどころのないーー後味が妙に残る苦い食べ物を食べたような気分に浸った。
600ページくらいまでは、肉体と精神を両方愛することは可能かどうか、といった単純な哲学的命題と向き合わされたような感じではあった。
ところが、だんだんと展開が読めなくなってきた。660項あたりで急に最後の展開が始まった。
ここから主人公のエウォルドの心理状態が二転三転する。
細部までは理解できなかったが、このあたりで600ページくらいまでに語られた伏線が回収されるようなストーリー仕立てであった。そして700項以降は最後までいっきに展開していく。
小説の中身の性質上、読者も恐らくは騙されてしまう構成となっている。ネタバレせずに書けるのはこのくらいがギリギリかもしれない。
・思い込みは強力に作用する
何かの本で読み、考えたことがあった。虚構と人間についてであった。
作り物は作り物として認識して、敢えてその「ノリ」に乗って楽しむ。そういう世界がある。
それとは別に、作り物が作り物であるかどうかが分からず、本物と「勘違い」してそのまま突き進む世界もある。
客観的に見れば、後者はなんだか可哀想なイメージがあるかもしれない。
しかし、そもそも人間の経験は完全なのかどうか。
「勘違い」から始まる物語は数知れない。そして「勘違い」が「ホンモノ」になることすらある。
こういう不思議な世界観が『未来のイヴ』のモチーフのひとつとなっている。
(書きながら、この本を読んでいた二週間をいろいろと思い出した)
・・・
(ここからさきネタバレあり)
エジソンはニセモノをホンモノにする能力があった。ニセモノをホンモノに変えてしまう。
ニセモノだと分かっていたが、最後にはホンモノとなってしまう。
何故か。
認識が変わったから、といえば簡単ではある。
エジソンは魔法使いではなかった。
ニセモノだと分かっていても、最終的にはホンモノだと完全に認識してしまう。
別に騙されていたわけでもない。
必然的な流れであった。
超越したから、といえばちょっと曖昧ではあるが、そういうことみたいである。
書きながらクライマックスを自分なりに落とし込もうとしているが、やはり最後は何回か読まないと分からない。
超越。
この超越を生み出す力、それが芸術なのかもしれない。ちょっと格好つけてこの物語の感想の締めとしたい。
・・・
新・読書日記356(読書日記1696)
気になった本をなんでもかんでも読んでみたい一日であった。
あっちいってこっちいって、忙しない一日だったように思う。
昼のカフェで眠気に襲われ、若干意識が飛んだのは良かった。そのあとも集中力がとんでもなく冴え、一日中読書が止まらない一日であった。
『兄 小林秀雄との対話』
メモ
(小林秀雄の言葉)
“「チェーホフのように、人間ていうものをよく知っている人は、そして人間の心情というものについて、いつも考えている人は、男も女も、平等公平にみているよ。女を軽蔑したりはしないね。亭主関白で、何事についても、男のはたらきを鼻にかけ、おれが働いて、おまえを食わしてやってるっていうような考えで、いばりくさってるやつは、人間の心のことなんかまるで考えたことのない男だよ。」” P34-35
『物質の蜂起を目指して』
“人間は「無限」を見出しては、そもそもこの「無限」を成り立たしめているところの有限性に出会わざるを得ない。(・・・)この矛盾は具体的な形で現れる。例えば、近代哲学の政治経済的現れとしてのリベラリズムの矛盾と限界を経験的に証明するのは、「無限」の経済的繁栄が可能性としてある一方で、現に存在する労働者階級の貧困・失業という事態であり、また時として不可避的に現れることになる帝国主義戦争である。” P50
『幸福論 第三部』
“苦しみは人間を強くするか、それともうち砕くかである。その人が自分のうちに持ってる素質に応じて、どちらかになる。幸福なときには、苦しみにどれだけ耐えうるか、かいもく自信がない。苦しんで初めて自分を知るのである。” p136-137
“(・・・)人間の精神は平常時にはふつう浅薄な考えや興味のいわば厚い被いに包まれているが、苦しみの時には、その被いがことごとく取りのぞかれて、その代わりに純精神的なことを容易に理解することができ、一切の人間関係を正しく評価し、また感情が真実になってくる。しかもこれらは、以前どんなに努力を積んでも得られなかったものである。この点において、苦しみはすべての良い行ないよりもまさっているとさえいえる。” P146
・・・
今日は有隣堂でだらだらと1時間くらい本を眺めていた。
いろいろな新刊が目に入った。先月は少々本を買い過ぎたため、購買意欲はやや控えめな一日であった。
(それでも結局本は買った)
なんだかんだで哲学書のコーナーは入れ替わりが早いように感じた。社会学系はいつも同じような本が置いてある印象。
心理学系もしかり。最近は心理学系でインパクトある本が出てこない。
これは買いたい、という本がなく、また自分で物を書いてみようかなと思う一幕もあった。
明日何を読むかまだ決まっていない。
つづく