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新・読書日記624(読書日記1964)

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日記

分裂する世界の正気について

今日の読書は、統合失調症に関する記述にとどまらず、世界の分裂そのものを照らし出していた。
『精神医学を再考する』によれば、統合失調症の経過は低技術社会の方が良好で、
技術が進むほど悪化するという。皮肉な話だ。
私たちは進歩の名のもとに「世界の再統合」を目指してきたはずが、
結果として一人ひとりの心をより細かく分断してしまったのかもしれない。

ベイトソンのダブルバインド理論が、いまもなお切実に感じられる。
「自由に話せ、だが空気を読め」「自分らしく、しかし組織に従え」――
この社会的メッセージの二重性は、もはや病理ではなく日常だ。
統合失調症的反応とは、そんな世界の内部で神経が正直でありすぎる人の悲鳴なのではないか。

スティーヴン・ジェイ・グールドは、「分類に慣れすぎて、大切なものを失っている」と言った。
医学は人を救うために名を与えたが、その名はいつしか人間を枠に閉じこめる檻となった。
苦悩は常に独自の形で現れる。それを「障害」と呼ぶことは、社会がその苦悩を理解する言葉を失った証左でもある。

そして私は考える。
この情報過多の時代、私たちはみな軽度の統合失調的存在なのではないか。
あまりに多くの矛盾、あまりに多くの声を同時に聞いている。
正気とは、すべてを統合する力ではなく、
分裂を抱えながら沈黙せずに語り続ける勇気なのだろう。

今日、ページを閉じながら思った。
「狂気」とは個人の崩壊ではなく、世界が抱える情報の過剰さに対する、一つの誠実な応答なのだ。

    

・・・・・・・・・・・・

メモ

“私はかつて幸福を信じたことはない。毎日、「死」が私のまわりを飛び廻っているのだ。・・・・・・人生はそれほど騒ぎ立てる価値のあるものであろうか?” P72(『ナポレオン言行録』)

“人口学的流動化に加えて、情報通信技術(IT)によっても流動性の上昇が促されます。こうして、「ここがダメなら、あそこ」「あそこがダメなら、こっち」というふうに、人間関係に関していつでも代替可能性を考えられるようになりました。(・・・)コミットメントの脱落は、流動性の上がった人間関係に対する合理的な適応です。” P21-22(『日本の難点』)

“関係性の履歴がなければ、「お前が死んだら悲しい」「嘘つけ!」で終了。実は日本の自殺率が先進国最悪で、イギリスの倍にも及ぶ理由も、ここから理解できます。” P80(『日本の難点』)

“(・・・)失業や貧困や社会的無力感によって、ほとんどの精神障害の率が高まるという統計的関連性が継続的に示されている。” P4『精神医学を再考する』)

“(・・・)十分な説明がいまだになされていないが、統合失調症の経過は低技術開発社会においてより良好であり、もっとも技術が進んだ社会においてより悪いものであることが示されている。” P4-5(『精神医学を再考する』)

(博物学者 スティーヴン・ジェイ・グールド) “「私たちが目にするものすべてを私たちの慣れ親しんだ分類法に割り振ることで、なにか大切なものを失っているのではないだろうか」” P17(『精神医学を再考する』)

“(・・・)人間の苦悩と障害との区別をしようとする際に、分類法はそれ自身の判定ルール二巻きこまれて混乱をきたすことがありうる。” P29(『精神医学を再考する』)

タレブ「専門家とは、一生ありとあらゆる予測をはずし続け、それでもなお次こそは間違いないと信じてしまう人たちなのだ」(『まぐれ』冒頭より)

“私は、大人になって働き出してからほぼずっと、理性(まぐれにはだまされない)と感情(まぐれに完全にだまされてる)の激しい葛藤を経験してきた。そんな中でうまくいったのは、理性で感情を押さえ込むのではなく、感情をなだめすかしてなんとかするやり方だけだ。(・・・)私たちに必要なのはずるがしこいごまかしで、仰々しく道徳的なお説教ではない。” P12(『まぐれ』)

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読書ブログを通じて浮かび上がる小さな思索の断片を、これからも綴っていきたいと思います。

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