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日記
『プラトーン著作集 第6巻第1分冊 櫂歌全書 16』
読んでは意識を失い、同じところを無意味に何回も読んでは意識を失い、ということを繰り返しながらなんとか「ヒッパルコス」は読み終えた。
仕事終わりにプラトンのような小難しい本を読むと一瞬で眠りについてしまう。さすがに今日はその多さにうんざりしている。
仕事をするとなぜ本が読めなくなるか、というタイトルの本がとても売れているらしい。
マルクス主義者からすれば、それは考える力をなくさせるほど、日々の労働によって人間性を否定されているからだろう。今こんなことを主張しようとすれば鼻で笑われるかもしれないが、実際にほとんどの人間は読めていないではないか。
と思いつつも、自分も実際に残業の嵐に遭えば確実に読書をする気力が無くなるだろう。
ヒッパルコスのテーマは「強欲について」である。
本書の中で最も短い短編のような形になっているので一日以内には確実に最後まで読めそうだと思い、眠気と格闘しながら最後まで読んだ。
「あいつは意地汚い」という言葉がよくつかわれるが、この対話篇での結論は、利益を「良いもの」として位置付ける以上(=対話で同意する以上)、強欲はすべての人間に当てはまり、「あいつは強欲だ」と批判するのは自分を批判することと同じことになるので矛盾する、というものであった。
しかしプラトンの本で大事なのは結論ではなくその過程にある。
ポイントは、強欲の定義を「(利益が)ありもしないものから利益を引き出そうとする態度」とすると、それは単に「認識が欠けている」だけであって、ソクラテス風にいえば「徳がない」だけになる。
利益がないと分かっていてそこから利益を出せることは言葉の定義上あり得ない。とソクラテスはこの対話篇で当たり前のことを述べている。
プラトンの論理はわりとハッキリしていて、「よいもの」と「悪しきもの」の住み分けの重要性を教えてくれる。
・・・
『バーナード・ウィリアムズの哲学: 反道徳の倫理学』
ひとつひとつの決断が正しいかどうかは時間が経たなければならない。道徳には運がつきものである、という考えは「帰結主義」である。ウィリアムズは運という要素を意識していて、第二章ではカント主義と功利主義について言及されている。第二章では、ウィリアムズの功利主義批判が検討されているあたり、ウィリアムズはどちらかというとカント派なのだな、ということはなんとなく掴みつつ読み進めた。
今日は「同一性」について書かれているページあたりで時間がきたので本を閉じた。
ウィリアムズはいろいろと邦訳されているので少し気になっていた哲学者である。
今平行して読んでいるピーター・シンガー『動物の開放 改訂版』と関連付けて次回以降何か書いていきたい。
つづく
水崎博明『プラトーン著作集 第6巻第1分冊 櫂歌全書 16』櫂歌書房(2017)
画像引用元:タワーレコード