つづきを読み進めた。
つづきを読み進める。
金沢大学教授、仲正昌樹氏の『現代哲学の最前線』NHK新書(2020年)によれば、世界の流れとして、今の哲学は大きく分け、
・正義論
・承認論
・自然主義
・心脳問題
・新実在論
この5つであるとした。
前回の記事から最後に至るまで、この現代正義論の大きな基盤となっているがゆえに、僕は一人ずつ要約していく。
今回はマイケル・ウォルツァーの正義観をまとめる。
ウォルツァーは、正義が多元的であると考えた。正義というものが単一の仕方であることが想定されているという前提から疑いにかかる。
この考え方は、「共同体主義」という、今日のロールズ批判の重要な論点であるとされる。
まず、人々の好みもバラバラで多元的であると想定する。そのなかでも普遍的なものを探す。
休日に山へ行きたい人がいれば海に行きたい人がいる。
ここでは、休日を求める「権利」というものが普遍的な要求であるとする。
物質的財産については、必要最低限は確保されるべきだとするものの、人々の価値観は多元的であるがゆえに、個々が必要とする量はバラバラであるため、道徳的に、そこに平等的配分を求める必要性はないとする。
財というものがそもそも様々な種類があり、かつ人々の好みもバラバラであることから、財の価値や意味も多元的である。
そのなかでも社会的財に関しては一線を引く。
例えば、「博士号」は売買の対象となるべきではない。
「医師免許」も同様に、これらが売買されることは不正義であるとした。
従って、財が異なると正義も異なるとした。
ウォルツァーは一貫して「多元的」「複合的」な世界観を想定している。
つまり、そこでは画一的な政治形態は不正義となる。
全体主義や専制は不正義である。
この複合的な構想においては、小さな不平等はあるものの、そこから大きく開いていくことはないとしながらも、正義を完全に定義付けすることはできないとした。
そこは経験的に、常に正義を更新する必要がある。
この考察は、今日の正義論に対して重要な、数多くの考察が残されたと著者はのべる。
つづく
公開日2022-01-27