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読書日記76

キャス・サンスティーン『行動科学と公共政策』勁草書房 (2021)

こちらのつづきを読み進める。

https://labo-dokusyo-fukurou.net/2024/04/07/%e8%aa%ad%e6%9b%b8%e6%97%a5%e8%a8%9875/

今回は「ときどきの厚生」という項を取り扱う。

ここは非常に哲学的なテーマであり、僕としては関心の高い領域である。

なぜ「ときどき」なのだろうか。

本書によれば、その理由としてはまず「客観的な善」というものがハッキリしていないことによる。

炭酸飲料(特にコーラ)は糖尿病のリスクを上げる⇒炭酸税を導入

これは健康を促進する意味で有効であるものの、人の尊厳や自由、幸福を奪いかねない。

映画館でコーラとポップコーンを持ち込んで、飲み食いしながら至福の一時を過ごす人たちにとって、税の導入は悪意に見える。

この例以外にも、嗜好に関わる数多くの領域にどう介入すべきか。

主観的な経験は本質的に私的なものか、という問いが本書で挙げられている。

この領域において行動科学はどう答えればよいのか。

そもそも、主観的な経験を客観的に記述できるものなのか。

この問いは以前、僕のブログに書いた。

https://nainaiteiyan.hatenablog.com/entry/2022/01/22/143807

哲学の良いところは、こういった現実的な問題に対してある一定の知見は提供できているということではないだろうか。

「文系の科目は役にたたない」という言説を、僕は支持しない理由がここにある。

つづく

公開日2022-01-29

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