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感想
二週間ほどかけ、本日読み終えた。
自分の傲慢さ、欠点、甘さを嫌というほど思い知らされ、苦しい読書であったが自分のために読み通した。
この記事を書いている今も苦しい。
自身の甘さを徹底的に叩きのめすためにはどうしても読まざるを得なかった。
それほど強力の本であり、毒性の強い本である。
・・・
「絶対負」の思想についてわずかに接近できたように思う。
それは「存在の内容と形式は矛盾せざるを得ない」と断言した池田晶子の思想と一致した。
それはまた、ゲーデル「不完全性定理」で証明された理論体系の必然的な自己矛盾性とも重なる。
・・・
絶対負とは言葉にできないものであり、説明することも不可能である。
科学的には「ダークマター」のような存在であり、実在することは確かではあるが語ることができない。語ることができた瞬間に矛盾が崩壊することによってただの情報に成り下がる。そして情報は時とともにエントロピー増大の原理のように消え失せる。
語ることができないものによって人間の生命が生かされる。
それを表現する営みが「芸術」であって、小説という「形式」によって文学作品は成立する。
したがって、文学作品を理解しようとすることは必然的に無意味となる。
大学で行われる文学の講義がつまらなかったのはおそらくこの為であるように思われた。
教えないことによって逆説的に教えることになる。
分かろうとしないことによって分かるようになる。
以上、深淵な文学論、美学論を本書から学ぶことができた。
公開日2023/2/6