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読書日記1011

       仲正昌樹『精神論ぬきの保守主義』新潮選書 (2014)

■株式会社新潮社

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日記

『パンとサーカス』は明らかに反米の精神が全面に表れている。

歴史的に左派、右派は「共産主義」vs「資本主義」を意味し、冷戦の終結 (=ソ連の崩壊) によって後者に軍配があがり、左派は徐々に衰退していく。

「脱成長」の名のもと、再び「社会主義」あるいは「マルクス主義」は息を吹き返しつつあるが従来の「共産主義」vs「資本主義」は明らかに無くなった感じがある。

従って「右派」に対する「左派」とは今日何を意味するのか。

仲正氏によればそれが「反米派」であり、その対立となるものが「親米派」ということであった。

しかし事はそう単純ではなく、完全に「脱アメリカ」を目指すのであれば、それは早くてもペリーが来航する前、つまり1853年以前の江戸時代を指す。

これはイコール鎖国状態であり、グローバリズムの流れを見事に逆らうことになりあまりにも非現実的である。

では「保守」は何を守るのか。

それを解きほぐしていくという内容となっている。

・・・

第一章においては思想家ヒュームの解説からスタートする。

本書によれば、ヒュームは物理的法則を超える「自由意志」の存在は認めていない。

(ヒューム「理性は情念の奴隷である。」)

仲正氏によれば、ヒュームの想定した秩序ある社会は「理性」によってではなく「慣習」によってかたちづくられているということである。

この慣習を歴史的な事実を素材としながら科学的に考えること、それが「政治学」というものだとした。

(ヒュームの論文「政治を科学に高めるために」)

「保守」は何を守るのかをざっくり言うならば「古き良きもの」であるが、ヒュームは「慣習」という歴史の「連続性」に着目したことから仲正氏の目には「保守」の論者だとされたということであった。

・・・

『パンとサーカス』は250ページまで読み進めたが、やはりエンタメ性が強いように思えた。

深い問いかけがない。

テロや陰謀、CIAといった、なんとなくウケが良さそうな話の展開になってきたように思う。

政治に対して関心を持ち始めた10代の若い読者がこれを読んだ後に次に何を読みたいと思うのだろうと改めて考えてみると、あまりいいものだとは思えなかった。

つづく

公開日2023/4/30

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