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永田希『再読だけが創造的な読書術である』筑摩書房 (2023) 読了

      永田希『再読だけが創造的な読書術である』筑摩書房 (2023)

■株式会社筑摩書房

公式HP:https://www.chikumashobo.co.jp/

公式X(旧 Twitter):https://twitter.com/ChikumaShinsho?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor

つづきをよみおえた。

https://labo-dokusyo-fukurou.net/2024/07/14/%e8%aa%ad%e6%9b%b8%e6%97%a5%e8%a8%981044/

  

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感想

タイトルに「創造的な読書術」と書いてあるが、これについては125ページで語られた。

“「創造的であるということ」は、それだけではたいしてありがたいものではありません。創造的であるということは、組み合わせのパターンが独特であるということにすぎないからです。” P125

例えば優れたアイデアというものは、既に過去にあったものが前とは違う「組み合わせ」によって刷新されたものになるパターンが多い。

メルカリは既にあったフリーマーケットが「ネット」と組み合わさったものであり、「サブスク」というサービスも特段新しいものではなく、自分は学生時代にジャパンタイムズの定期購読をしていたがそれも「サブスク(=subscription)」である。

著者はその組み合わせの質をより優れたものにするためには「感性」と「思考」を自分のものにすることが大事だと語った。

そのためには「読み捨て(一冊一冊を丁寧に読まない態度)」や遠回りが必要であると説明されたが、自分も共感でき、振り返ると遠回り(表面的なテクニック、小手先なものに頼らないこと)がいかに基礎をつくってきたのか実感した。

ではどのような本を読むべきか。

その問いも含め、結局のところ「正しい読書術」という問題は、「遠回り」的には答えがない。著者は「ためらい」との葛藤が大事だと説く。

“いまあなたが手にしている書物は、読まずにとっておいて、あるいはどこかへ売り飛ばしてしまった方が良いのかもしれません。このためらいを繰り返し、それでもなおどうしても読みたいというものが現れるのを待ちましょう。” P61

売り飛ばしたい本はだいたい三つのパターンがあるように見える。

・読み終わってしまった

・難しいので読めなくなった

・時間がないので読めない

個人的に読み終わってしまった本は売ってしまったほうが次の本を買う費用を捻出できるので良いと考えているが、本書を読んでそれが全てではないと感じた。

人は仕事を覚える際に、一日に30個の異なったタスクを完璧に覚えることはほぼ不可能であるように、情報量が多すぎる本を一回の読書で全て吸収するのは物理的な制約上難しいことを考えれば、「再読」によって記憶の定着に限らず、その本の情報が別の情報と結合することで新しい視点を増やすことができる。

“再読は、読者それぞれの読んできた書物どうしのネットワークを、読者それぞれが読んできた知識や概念のネットワークを、組み替えて再構築する行為です。” P130

難しい本や時間がない本であってもすぐに売ってしまうのはやはり惜しいと感じた。(とはいえ自分は何かを売ってでも別の本を読みたくなってしまうことが多いが)

記憶上の制約、流動的な時間性。

人間が一日でできることはたかが知れている。

にも関わらず一回の読書でその本の全てが分かったかのように思い込むのは傲慢ではないか。本書はいままでの自分の読書のあり方を問い直すとともに、これからまた出会うであろう本とどのように関わっていくべきか考えさせられるものであった。

公開日2023/6/2

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