■株式会社創元社
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つづきをよみおえた。
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感想
文系と理系の領域横断的な思考の大切さを教えてくれた本であった。
事実に基づく判断と価値に基づく判断が相乗効果を生み出す。
”「科学を通じた正義」を進めていくための議論に、引き続きお付き合いいただけると幸いである。そこで求められるのは、教養学部的な文理融合の視点である。” P211
また、進化論に対しても新しい視点をもつことができた。
例えば、適応主義(「なぜそのような機能があるのか?」という問いに対して、答えを個体が持つ遺伝子の繁殖と結びつける立場)にこだわることによって、同性愛の存在理由が説明できないことがあるわけである。
人間のそれに対して、著者はコミュニケーションの役割と関係があるのではと見ている。
自然淘汰の視点、社会淘汰の視点、適応主義の視点など、進化論にも物の見方は複数あることが理解できた。
・・・
後半は単為生殖や、人間の歴史的なジェンダー観と科学的知見との関係について言及された。
やはり新しい発見の連続であった。
単為生殖とはオスなしに、メスのみで子孫を残す生殖形態をさす。
本書では約80種の生物で確認されていると書かれていたが、まだまだ研究が進んでいないということを鑑みれば、膨大な種類がいるのではと思わされる。
その80種については、コモドオオトカゲ、シュモクザメ、ナカジマシロアリなどが挙げられるそうである。
また、ひとつの個体がオスとメスの両方の生殖機能を備えている「雌雄同体=両性具有」も500種ほどいると書かれていた。
モグラ、カタツムリ、魚などがその例であるとされる。
ここまで読めば、人類においても同性愛が自然界としてはごく普通のものだと分かる。
本書の終わりにかけては同性愛とギフテッドについて書かれていた。
結論としては、三島由紀夫や南方熊楠のような天才は同性愛の傾向が微妙に高いというものであった。また、この二人にはその傾向があったとされる。
あくまで傾向ということで、まだまだ分からないことが多いようである。
・・・
結果には原因が複数絡んでいることが多い。
三脚のように、単独だけでは成立し得ない仮定というものもある。
解釈が要請される生物学などは、だからこそ文理の融合が求められる。
しかし「なぜそうなのか」」という問いに答えるのはあまりにも難しい。
本書では事例と仮説、著者の意見が紹介されるが断定は少ないように感じた。
それはまだまだ研究が進まないのと、物事の複雑さにある。
裏を返せば、断定が早ければ早いほどそこには論理の穴がある可能性が高いということである。
デカルトのように何年も疑いつづけるのはどうかと思われるが、断定的な言説には注意すべきではないだろうか。
公開日2023/8/7