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読書日記1182

    松岡正剛『文明の奥と底 千夜千冊エディション』角川ソフィア文庫 (2018)

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日記

マーク・トウェインが示唆しているのは、勝手な推測ではあるが、デカルト以後の合理主義によって人間が機械的に行動するようになってしまったことへの警鐘ではないだろうか。

数式によって人間の行動を完璧に推測することはできない。しかしアイヒマン実験をはじめとした、様々な心理学の実験によって、条件さえ揃えば人間の行動をある程度推測することは可能になったと思われる。

現代では人間の行動に関する様々な分野(ゲーム理論、行動経済学、行動分析学)などでそれらの知見が応用されていき、公共政策などにも用いられるようになった。(ナッジ)

こうした流れの末にあるのはユートピアか、ディストピアか。

その判断材料として、文明に関する書物は多いに役に立つ。人間のマクロ的な行動の原理や法則は歴史や文明論がヒントを与えてくれる。

今日のテーマは「自己家畜化」である。

最近、書店へ行くと人間の家畜化に言及する本が少しずつ増えているように見える。

家畜は「管理」される側である。監視社会は管理社会とほぼ同じだと自分は考えている。したがって、自粛警察で見られたように、お互いがお互いをゾンダーコマンドのように監視し合う社会は監視社会の入り口とも言える。現代はそこまで来ている。

執行草舟氏は語る。

“今殴り合ったら警察が来るから、できなくなってしまっている。それぐらい管理社会になっているってことです。それが分かっていて、その中でどう生きるかを今問うているわけ。” P88(『現代の考察』)

Youtuberに正義感が強く、あらゆる詐欺を撲滅しようとする活動家がいる。

しかし裏を返せばこれはある意味現代のゾンダーコマンドである。勿論、社会的意義は大いにあるが、自分はこれも何かの流れのひとつだと捉えている。

・・・

自分はひとつ疑問を抱いた。家畜化するなら勝手にしやがれだ。しかし、文明の崩壊と家畜化は相関するものなのだろうか?

歴史家のトインビーは家畜化には言及していないように見えるが、現代の神なきヒューマニズムの末には崩壊が待っていることを書いている。

“とくにトインビーが確信したのは、すべての歴史は「神と人間の遭遇の歴史の変形」であって、神をその成員として認知しうる高次な社会を形成しないかぎり、どんな文明も次々に崩壊するであろうということだった。” P344(『文明の奥と底』)

科学の勃興によって神への信仰心がほぼ消滅。人間は人間自身を地球規模で管理しようとする。この文明の傾向に執行草舟氏は様々な著書で批判している。

「人間とは何か」

今日、こういう問いを真面目に考えると笑われるかもしれない。

しかしそれはニヒリズム、シニシズムという社会的な病理が覆っていることに起因すると自分は思っている。

このことについては西部邁が『虚無の構造』をはじめとして、様々な書物で語っている。全てはこれに収斂すると自分は見ている。

そして自分は思う。たしかに人間が機械的に見える瞬間はある、と。

公開日2023/10/28

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