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感想
二週間弱で読み終えた。1ページ1ページ、考えさせられる内容が多く、時間をかけてゆっくりと読んでいくことで、いろいろな考察の引き出しをもらい、今日の混乱する政治状況(なにかと批判が多い日本の政治など)のなかで何が本当に大切なのかを自分なりに考える材料となる本だと思えた。
解説は個人的に畏敬の念を抱いている、金沢大学の仲正教授ということで、本書は非常に価値あるものだと自分は思った。最後に解説もしっかりと読み、本書の時代的な背景も併せて学び、ミルという人物がどういう意味で重要なのかということも少しばかり学び取ることができた。
解説によれば、ミルの時代(19世紀)は民主化が進み、時代の過渡期のなかである。オルテガ『大衆の反逆』にも書かれているように、市民は人口の増加とともに次第に「多数派」となっていく。多数派が世論を占めることによってどんな弊害があるのか。何を考えなければならないのか。そのような懸念のなかでミルが出した答えがこの本なのだというものであった。
重要なことのうちのひとつとして「思想と言論の自由」というものをミルは掲げる。これは市民の多数化を逆手にとったようなものだと自分には思われた。大勢いれば0.1パーセントくらいは優れた意見が出てくるものである。多数派によってそのようなマイノリティでありながらも優れた思想をつぶしてはならない。それは著しく社会の進歩を妨げるからである。そういうメッセージをいたるところで自分は感じることができた。
今日、ミルの意見はどのように生かせるだろうか。自分は帰り道にいろいろと考えた。まずはどんな状況であれ、自分が絶対正しいという確信には気をつけることである。時には必要な時もあるかもしれないが、基本的には常に判断を保留する。そして様々な角度からの意見を加味し、間違っていればすぐに軌道修正を行う。きれいごとに聞こえるかもしれないが、この地道な作業の積み重ねによって未来は開けるのである。
メモ
モルモン教について語るミル
“私は、モルモン教の一夫多妻制に、誰よりも強く反対する者である。(・・・)人間のあいだの義務は相互的であるはずなのに、男性は女性にたいする義務を免除する、そういう制度だからだ。” P223
⇒他人に危害を加えるような思想には断固として反対の意を示さなければならない。
官僚制について語るミル
“(・・・)すべて政府の計らい次第になったらどうする。そうなったら、出版の自由があろうと、議会制度が民主的であろうと、またイギリスであろうと、どの国であろうと、自由は名ばかりのものとなる。そして、行政機構が効率的で科学的につくられていればいるほどーーーその機構を動かす優秀な労働力と頭脳を獲得する段取りが巧妙であればあるほどーーー弊害は大きくなるだろう。” P265
“国家の価値とは、究極のところ、それを構成する一人一人の人間の価値にほかならない、だから、一人一人の人間が知的に成長することの利益を後回しにして、些細な業務における事務スキルを、ほんの少し向上させること、あるいは、それなりに仕事をしているように見えることを優先する、そんな国家には未来がない。” P275