原田和広『実存的貧困とはなにか : ポストモダン社会における「新しい貧困」』青土社(2022年)を読む。
アクセル・ホネットの「承認論」を基盤にした貧困の実証研究が書籍化された。
読まずにはいられない。
ホネットはナンシー・フレイザーとの論争で、「承認」を「再分配」の上位概念に位置付けた。一方で、フレイザーはパースペクティブ二元論を提案する。
この本が生まれた理由について、導入部分で説明がなされる。
キャバクラで勤めていたA氏が、著者が経営する就労支援事業の事務所に訪れ、何度も何度もやりとりを交わした末に結局はうまく事が運ばなかったという。
著者は限界を感じ、社会人大学院へと進む。
そこでこの事例を指導教員に提示したところ、ことごとく批判される。
原因は著者が持つ「夜の職」への偏見であった。
10年後、この本が出たとき本書では、A氏が求めていたのは「存在証明」であったと著者は語る。
不寛容社会とは、「承認」が希薄な社会と言える。
本書は生きづらさが蔓延り、かつ複雑な日本世界においてどうするべきであるかという問題に対してヒントを与えてくれるだろう。
つづく
公開日2022-02-17