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新・読書日記626(読書日記1966)

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日記

秋晴れの光はやわらかいのに、画面の向こうはいつも急いでいる。タイムセールは秒を刻み、通知は呼吸を奪い、レコメンドは名づける前の渇きを先回りして整列させる。ここ数日の読書と思索をまとめるなら、私が取り戻したいのは世界の全面的な否定ではなく、判断の主権だ。テンポを選び直す権利、測り方を自分で設計する自由。その回復は、アドルノのミニマ・モラリア(不正を最小化する生活技法)と、センのケイパビリティ・アプローチ(〈できる〉と〈選べる〉の実質的自由を整える発想)を橋渡しするところから始まる。


まず、今日の核となる発見を置いておきたい。カントの語彙で言えば、私たちの倫理は境界(完全義務)と余白(不完全義務)の二層で織られている。完全義務は「越えてはならない細い線」であり、欺瞞・強制・搾取の禁止のように明確だ。他方、不完全義務は「関係や配慮を厚くする余白」で、誰が何をどこまで、は厳密に特定できない。それでも、社会が人間的であるためには、この余白を痩せさせてはならない。ミニマ・モラリアは、まさにこの二層を日常の単位で運用するための、小さな道具箱である。

アドルノは、欲望の敵ではなく同一化と速度の回路の批判者だった。文化産業が回収してしまうのは、私たちの「選び方」そのものだ。だから不服従とは、全部を拒絶することではない。遅らせる非計測の時間を置く他者性を手段化しないといった微小な身振りで、リズムと判断の主権を取り戻すことだ。夜の判断を朝に移すというだけでも、私の行為は別の形をとる。遅延は怠慢ではない。設計の回復である。

この「設計」の回復は、福祉と就労の現場にもそのまま降りてくる。私は長らく「福祉=支援」という言い回しに居心地の悪さを覚えていた。支援という言葉は、往々にして“欠け”を補う一方向の図を呼び込みやすい。だがセンを読むと、福祉とは人が〈価値があると理由づけられる生〉を実際に選べるように、〈できること(capabilities)〉を整える共同の営みだと言い換えられる。ここで焦点は、物やサービスの提供ではなく、転換要因(conversion factors)——すなわち個人・社会・環境の条件によって「同じ資源がどのように別様の結果を生むか」を見通し、場を編集することに当たる。

就労支援に引き寄せれば、成果を「就いた/続いた」に一点化する発想は貧しい。もちろん配置率や定着率は重要だが、当人が価値をおく在り方——時間の主権、体調の持続、学びの増分、関係の質、通院やケア責任との両立——と、それを現実に選べる幅を測り、広げることが本丸だ。センが「本人が価値をおくような生を生きられる、そして価値をおく理由があるような生」と呼んだ自由は、抽象的理想ではなく設計課題である。私は、目標を“職種”でなく価値の束で表し、介入を個人・社会・環境の三層に一本ずつ置く。技能訓練(個人)だけでは足りない。偏見や慣行の変更(社会)、交通や職場設計の改善(環境)を併走させることで、はじめて〈できる〉が実体をもつ。

ここで忘れてならないのが、測定の主権だ。効率の言語は魅力的で、厚生経済学のパレート原理が示す整然さは抗いがたい。しかし、無条件の自由要求とパレートの改善が衝突する局面は避けがたい。だからこそ「誰のメーターで成功と言うのか」を当人と共に決め直す必要がある。制度指標(配置・定着・賃金)の横に、本人指標(価値束の達成度、選択肢の幅、日・週のリズム適合度、学びの増分)を並立させる。数字を捨てるのではない。複数の尺度を共存させ、測定の設計権を分有するのだ。

判断の主権を取り戻すうえで、熟議は特別な位置を占める。民主主義は西洋の専売特許ではない。古い仏教会議に見られるように、異なる見解が公開され、比較され、合意が記録される実践は、文化を跨いで存在してきた。センの言う「メタ選好」は、まさにどの価値を公共的に語りうるかを選び直す力である。就労支援の現場なら、本人・支援者・雇用側の三者で、収入の安定と体力負荷、社会参加の機会と静寂の必要、といった価値のトレードオフをテーブルに出し、暫定合意+見直し期日で回す。固定化ではなく更新可能性を制度化すること、それ自体が自由の基礎体力になる。

アドルノをもう一度呼び込む。文化産業への不服従とは、娯楽を禁欲することではない。供給側から距離をとる情報衛生遅延の技法非計測の受容可逆性と公開性の二問といった、ごく小さな身振りの反復だ。広告を見かけたら即時に嫌悪しないで翻訳する。「このコピーは何の不安を刺激し、どこへ私を誘導しているのか」。ショッピングカートに入れる直前に、値段を自分の時給で割ってみる。「この選択は、私の生命時間を何時間差し出すことか」。会うべき時間を、演出の濃い夜から、静かな午前に移す。これらは禁欲ではない。歩幅の回復であり、主権の微小な行使である。

ベルリンの比喩も胸に置いておく。「曲がった材木」から真っ直ぐなものは作れない。だから、私たちがすべきは直線への矯正ではなく、曲がりを前提にした道づくりだ。倫理の野では、完全義務の線を細く明確に引き、不完全義務の余白を厚く柔らかく保つ。制度の野では、単一の指標に吸い寄せられる誘惑を抑え、複数の尺度を併存させる。生活の野では、遅延と非計測の時間を日課に据える。これらは大仰な革命ではないが、着実にテンポを変える。テンポが変われば、欲望の形も、関係の輪郭も、孤独の響きも、同じではいられない。

AIの時代に、この構図はさらに鮮明になる。アルゴリズムは「選択を増やす装置」であって「決める装置」ではない。レコメンドには理由の文を添え、当人がその理由を編集できるUIにする。マッチングは、通勤半径、環境ノイズ、午前稼働の適合、必要なインターバルなど、価値束に即した根拠とともに提示する。データは縦割りにせず、説明可能性とバイアス監査を明文化し、いつでも撤回・修正できる合意を前提に扱う。AIが「測定の主権」を奪うのではなく、選べる幅と説明可能性を増やすことに奉仕するなら、技術はセンの地図の上で善き道具になりうる。

私は、現場の言葉として次の言い換えを採用したい。支援(help)ではなく伴走(伴って走る)。提供ではなく場の編集。施策ではなく共働(co‑production)。保護ではなくリスクの尊厳(小さく・短く・可逆的に試す)。評価ではなく再設計。いずれも、相手の中に「既にある力」を前提にする。福祉とは、欠けた人を支えるのではなく、その人が価値をおく生を選べるよう、〈できる〉と〈選べる場〉を共に整えることだ。そのために、制度は「戻れる道」を常に残し、挑戦を安全に失敗可能にしておく必要がある。失敗が学習の入口になるように、撤退基準と見直し期日を最初から設計しておく——これもまたミニマ・モラリアの一部である。

ここまでの議論を、最後に生活の道具に落とす。

  • 朝の審理窓:夜に決めない。翌朝の20分で判断する。遅延は拒絶ではなく、測定権の行使だ。
  • 非計測の20分:音楽・詩・自然のいずれかを、数えない時間として毎日置く。余白は余白のままにしておく勇気。
  • 可逆性/公開性テスト:役割を入れ替えて耐えられるか。明日、他者に説明できるか。通らないなら中止か再設計。
  • メーターの二階建て:制度指標と本人指標を並立。毎回、「誰のメーターで今日を良いと言ったのか」を確認する。
  • 三層介入:個人・社会・環境に一本ずつ。訓練だけに寄せない。偏見と場とルールをいじる。
  • 可逆的試行:小さく・短く・撤退路を明記して試す。事後は「事実/感情/次の一手」を各一行で記録。
  • 広告の翻訳:見かけたコピーを一文で言い換える。「この不安を刺激して、私をどこへ誘導しようとしているのか」。

これらは、世界のスイッチを切るための手引きではない。こちらの歩調を取り戻すための筋トレだ。鍛えるのは筋肉ではなく、テンポと測定の主権である。小さな不服従を反復するうちに、生活のリズムは少しずつ厚みを取り戻す。厚みが戻れば、価値の衝突は消えないまでも、近傍が助長される。ベルリンが言うように、価値はときに衝突する。その不安定さを抱えたまま、しかし極小化して生き延びるには、境界を細く、余白を厚く、測り方を共に設計するほかない。


【AI補遺:現場実装のための5項】

  1. 説明可能レコメンド:求人・業務提案には「理由の文章」を必ず添える(例:通勤30分圏/午前稼働適合/静音環境)。本人が理由文を編集できるUIにして、モデルの価値前提を共同で更新する。
  2. 二階建てダッシュボード:1階=制度指標(配置・定着・賃金)。2階=本人指標(価値束達成度、選択肢の幅、日・週のリズム適合、学びの増分)。AIは自然言語で週報を生成し、次の一手を3案だけ提案する(過剰提案は意思決定を弱める)。
  3. 可逆的試行のプロトコル:小さく・短く・撤退路を明記して試す(例:30分の時間延長、在宅:出社=3:2→2週間)。AIは稼働ログや移動負荷を解析し、過負荷前兆を事前アラート化。
  4. 三層転換要因の偏り監査:介入ごとに「個人/社会/環境」のタグを付与。AIが書類を読み、個人対策への過度集中暗黙の排除条件(固定時間帯、過剰な同調規範)をハイライトする。
  5. データ・ガバナンスの約束:最小限収集/目的限定/撤回自由/説明可能性/バイアス監査。A4一枚の「AIの使い方の約束」を本人と共作し、いつでも更新可能にする。

【ケース小景:伴走×AI】

  • 価値束:①通院と両立 ②午前集中 ③静かな環境 ④学びの継続。
  • 提案:通勤25分圏の軽作業A(午前のみ)、在宅ライティングB(週2)、図書館ピッキングC(静音)。
  • 理由文(AI):「午前稼働・静音・通院水曜AM固定に適合。Aは身体負荷低/Bは学習性高/Cはリズム適合度高。」
  • 可逆的試行:まずCを2週間(撤退基準=疲労スコア>7/10が3日連続)。
  • レビュー:事実/感情/次の一手を各1行。AI週報「移動疲労の山は木曜。C継続+Aを金曜午前に30分トライ」を提案。 → 意思決定は本人。AIは選べる幅と理由を増やす役。

【用語の極小辞典】

  • 価値の束:当人が「これがあると生が良くなる」と理由づける構成要素の集合。
  • 転換要因:同じ資源が人により異なる成果になる“変換条件”(個人・社会・環境)。
  • 測定の主権:何で良し悪しを測るかを、本人と共に決め直す力。

【よくある反論と短答】

  • Q: 指標を増やすと現場が回らない。/ A: 二階建て化で整理する。制度指標は維持しつつ、本人指標は3つに限定し自然言語で可視化する。
  • Q: 失敗を許すと混乱する。/ A: 可逆設計にすれば学習になる。撤退基準と見直し期日を最初に明文化。
  • Q: AIは人を置き換えるのでは?/ A: 置き換えるのは選択肢の探索。決めるのは当人。説明可能性と撤回権を運用の前提に。

【A4テンプレの骨組み(配布用)】

  1. 価値の束(3–5項):____
  2. 三層転換要因:個人__/社会__/環境__
  3. 可逆的試行(期間/撤退基準/見直し日):____
  4. 指標(二階建て):制度__/本人__・__・__

【福祉と正義:AI的推敲】 問いの再構成

  • 福祉は何を最大化するのか(効率/満足/所得)ではなく、何を最低限保障し、何を一緒に増やすか(基本的自由=フロア/ケイパビリティ=増分)を決める営みである。
  • 正義は結果の良さだけでなく、手続の可視性測定の主権の分有を含む。

1) パレート原理と自由の最小線の“接続”

  • 厚生の改善(パレート)と個人の自由の無条件的要求は、ときに矛盾する。AI設計では、
    • 方法:①基本的自由をハード制約に置く(例:強制・虚偽・差別の排除を満たさない案は探索対象から除外)。②その上でパレート改善を二次目的に。
    • 実装:多目的最適化を語彙化して提示(「自由制約を満たす案の中で、通勤負荷↓・所得↑・学び↑の折衷」)。

2) 権利の二問と“翻訳レイヤ”

  • 「何が権利か」と「どこまで行使可か」を分ける(センの整理)。AIは翻訳者として、
    • 権利→運用:抽象権利をチェックリストに落とし、案件ごとに「可逆性/公開性/差別影響評価」を自動点検。
    • 行使の限界→説明:衝突時は理由文(どの権利がどの程度衝突し、どの代替があるか)を生成。

3) 多元価値と集計:ベルリンへの応答

  • 価値はしばしば衝突する。単一スコアに押し込まず、
    • 可視化:ケイパビリティごとにパレート前線を描き、劣位案を捨てる。
    • 決め方語彙的順序(基本自由>安全>選好)やミニマックス後悔(最も脆弱な群の後悔最小)など、采配ルールを本人と合意してから適用。

4) ポジション依存的客観性:位置の記述

  • 人は複数の位置に属し、転換要因が成果を左右する。
    • データ:個人(健康・技能)/社会(偏見・ネットワーク)/環境(交通・規則)を位置ベクトルとして明示。
    • 公平性:カウンターファクチュアル公平性や機会均等指標を、説明文付きで監査。

5) 少数派が犠牲になる格率へのガード(コンドルセ)

  • 多数決が少数を系統的に不利にするのを防ぐため、
    • 権利の下限(例:静音環境・休憩権・柔軟時間)を非交渉ラインに固定。
    • 代表性監査:推奨案が常に同一の少数群に不利益を与えていないかを連続監視

6) カント的二層:境界と余白の運用

  • 境界(完全義務)=虚偽・強制・搾取の禁止/同意の曖昧さで決めない。
  • 余白(不完全義務)=配慮・学び・回復の厚み。AIは余白の候補(休憩スロット、学習機会、関係支援)を提示し、選択は本人に残す。

7) 手続の正義:説明・異議・更新

  • 説明:提案は根拠・制約・トレードオフを自然言語で。
  • 異議申立:当人が理由文を修正し、再計算できるUI。
  • 更新:暫定合意+見直し期日。モデルは学習ログを残し、偏りを定期是正。

失敗モードと回避

  • 同調主義:単一スコアで最適化→多目的・可視化・語彙的順序へ。
  • 過保護主義:挑戦を封じる→可逆的試行+撤退基準で“安全に失敗可能”。
  • ブラックボックス:理由不在→説明可能性+反証可能性(本人編集)を仕様化。

ケース(就労版)

  • 基本自由制約:差別回避・強制不可・健康ハザード上限。
  • 目的:所得↑、通勤負荷↓、学び↑、社会関係↑。
  • 采配ルール:自由制約→パレート前線→ミニマックス後悔。
  • 出力:3案+理由文+可逆的試行計画(期間・撤退・見直し)。

最後に、合言葉を残しておく。

境界は細く明確に(完全義務)。余白は厚く柔らかく(不完全義務)。測り方は当人と共に(測定の主権)。

この三つを携え、私は秋晴れの歩幅で、文化産業への不服従を今日も小さく更新する。世界のテンポに従うかどうかは、世界が決めない。私が決める。

   

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メモ

“オニールの批判に応えるにあたって、当為や義務は「完全」でも「不完全」でもありうるというカントの区別に言及したい。「完全な義務」は誰が何をなすかが正確に特定化された当為であり、「不完全な義務」は権利の充足のために人々が適切な援助を提供するという一般的な——そしておそらく非厳密な——形をとる当為である。当然ながら、広く特定化された「不完全義務」は、他の——より完全に定式化された——「完全な義務」を補完することになる。” P38(『福祉と正義』)

  

“(・・・)自由の権利に対する無条件的な要請は、最小限の要請であろうとも、厚生経済学でなじみの深いパレート原理に関する無条件的な要請と矛盾することをわれわれは知っている。” P45(『福祉と正義』)

  

“コンドルセ自身が警告するように、「古代の、また現代の共和主義に広まっている、少数派が合法的に多数者の犠牲になるという格率」が存在する。” P45(『福祉と正義』)

    

アドルノ、ミニマ・モラリアの実践方法

・欲望は命令ではなく信号 遅延の技法

・タクトを倫理の中心に 可逆性テスト:役割を入れ替えて耐えられるか

・刺激の供給側から距離をとる 解放の語りが市場化されると欲望は消費の回路に編入される

・テンポをずらす 文化産業への不服従

不服従・・・全部否定することなく自分のリズムと判断の主権を取り戻すこと

    

「民主主義=西洋」という図式に対するセンの見解

“例を挙げよう。仏教徒の知識人が指摘した公共的討議の重要性は宗教その他——世俗的なものでさえ——の主題に関する広いコミュニケーションにつながるのみならず、多様な議論の場の設定を目的とする最初の三つの地球規模の会合、つまり「世界会議」につながった。最初の仏教会議は仏陀の死後、紀元前六世紀にラジャグリハで開催された。二回目一〇〇年後にヴァイサリーで、三回目はアショカ王の主催で紀元前三世紀に、一〇回目はインドの首都パタリピュートラで。そこでは、異なる見解が公表され比較され、合意事項が記録されている。” P51(『福祉と正義』)

  

“(・・・)権利ならびに社会的目標を帰結的に定式化することは、社会的選択理論をうまく用いることを可能とする。” P53(『福祉と正義』)

  

“権利を論ずる際には、何をもって個人の権利と定めるかという問題と、個人による権利の行使をどこまで認めるかという問題を区別することが有効である。” P60

  

“これは社会的意思形成にあたって、パレート条件に表現される形式的な民主主義の要請と個人の意思決定の自由を常に両立せしめることは不可能であることを示すものである。” P63(『福祉と正義』)

  

“(・・・)センが言うように、現代においては、個々人は複数の位置、範疇、共同体、社会に属し、多様な興味、選択、判断を互いに表明するならば、彼は互いに還元できない複数の価値を認識できるかもしれない。” P75(『福祉と正義』)

  

“(・・・)アマルティア・センの福祉と開発の経済学が主題とした自由とは、「本人が価値をおくような生を生きられる——そして価値をおく理由があるような生を生きられる」という広義の意味での自由であり、それを支えるために必要な社会制度的な諸自由を指す。” P76(『福祉と正義』)

諸自由について

市民的自由・福祉的自由・政治的自由

  

“センは責任ある選択をするためには、個々人の個別的状況に依存して形成される判断の普遍的意味を理解しようとする「ポジション依存的客観性(position depending objectivity)の観点から、多様な帰結的評価を行うことの重要性を指摘する。重要なことは、選択しうる多様な選好の中から公共的な発言に相応しいものを選択しようとする個人のメタ選好を促す公共的熟議であり、それを民主主義的集計手続きの中に組み込むことである。” P80(『福祉と正義』)

   

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“カントのように厳格な道徳論者はあまりいなかったが、その彼でさえもが一瞬の啓示を受けて、「人間性という歪んだ材木からは、真直ぐなものはかつて何も作られなかった」と語ったのである。独断的に信じ込んだ計画に必要であるとして人々にきちんとした制服を着せようとするのは、ほとんどいつも非人間的なことへの第一歩であった。” P27(『理想の追求』)

  

“積極的価値が対立しているにすぎぬという状態からでも、衝突が不可避になるであろう。しかし、不安定ながらも近郊を助長し保持することによって、対立を極小化できると、私は信じている。” P27(『理想の追求』)

   

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“プラトンに言わせると、プロタゴラスこそ最初の「ソフィスト」、すなわち徳の教師だ(徳はギリシャ哲学者を大きく魅了した主題だった)。プロタゴラスの最も有名な言葉は「人間は万物の尺度である。あるものについてはあるということの、あらぬものについてはあらぬということの」(・・・)私には前半部分のほうに意識が向く。というのも、私はプロタゴラスがわずか一字の差で間違っていると思っているからだ。物事には尺度がある。これは根源的な性質と言える。それに対し、人間は万物の尺度(measure)ではない。万物の測定者(measurer)である。” P47(『不可能、不確定、不完全』)

   

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読書ブログを通じて浮かび上がる小さな思索の断片を、これからも綴っていきたいと思います。

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