佐藤郁哉『大学改革の迷走』のつづきを読む。
今日は大学院に関する章を読んでみた。
高学歴の人材がフリーターになってしまう「高学歴ワーキングプア」という言葉がある。また、そんな背景があってか、日本では「博士離れ(=院を卒業する者が減少)」が進んでいるという。
著者はこの原因として以下の3つを挙げる。
1.若手研究者の雇用不安定化
2.産学間の人材需要のミスマッチ
3.民間企業の雇用慣行による博士人材採用の壁
個人的には、「学歴ロンダリング」というものはおそらく3点目、民間会社が院卒をあまり採用できない現状から1につながり、それを把握した学生の院進学への動機が弱まる。受験者数が減り定員割れが起き、経営上、やむを得ず合格点を下げ、受け入れたがる大学が増えたという状況から発生したことが想像できる。
本書によれば、大学院を増やし教育の水準を上げるための政策にも関わらず、このようにして博士離れが進み、他国と比べて日本は大きく博士号取得者が相対的に少ないという現実を生んでしまった。
これは簡単な話ではないことは容易に想像がつく。
バイオ系の院卒者が少ないという話のみならず、本書では人文系も少ないことが私的された。日本の知的観点からの文化水準低下が懸念される。
これは様々なことが複雑に絡まっている。
いろいろなことに思いを巡らせる一冊であった。
つづく
公開日2022-03-31