大竹文雄『競争社会の歩き方』中公新書(2017年)を読む。
この本を読むことはある意味苦痛でもある。
著者は今流行りの「行動経済学」の学者である。
冒頭からいきなり転売行為を論理的に擁護する。
可能な限り私的な感情を排除すると、著者の論理は妥当に見える。
コンサートチケットの転売問題は、経済学の視点から見れば合理的であり、それが市場の原理であることに何ら疑いない。
チケットが抽選であることに「非効率性」があることに異論もない。
これは経済学という「系」の話に限れば、である。
そのように僕は考える。
ここから先は「道徳」「倫理」「法律」が絡む。
例えば、ある生物の行動が「善意によって」なのか、「機械的」なのかは人間の解釈に委ねられると考えられる。
転売も人間という生物の行動である。
どうやって解釈をすべきか。否。経済学は経済学が必要とする用語を用いればいいだけの話だ。
つまり経済学的に論じる際は、あくまで転売問題は経済を数学的、論理学的に記述すればよい。
そして行動経済学は量子的な要素をはらむ。つまりはAであながらBであるという状態、言い換えれば「合理的でありながら非合理的である」事例も取り扱う。
場合によっては「道徳的でありながら不道徳的である」事例もあるかもしれない。
社会を経済学の用語だけで論じるのはナンセンスである。
論点の重要な部分は、社会は常に多元的世界であるということだ。
特に僕が関心のあるジャンルである。
慎重に読み進めていきたい。
つづく
公開日2022-01-21