ラボ読書梟 (旧 はてなブログ大学文学部)

新・読書日記5

       ビートたけし『人生に期待するな』扶桑社 (2024)

  

テレビで言えないようなことをハッキリと書けるところがビートたけしの魅力ではないかと、自分は感じている。

前半は権力とお金について切り込んでいる。

マーケティングの本質を「いかに間抜けな大衆を操るかに尽きるんだよ」と書いてのける作家はそういないだろう。

最初から最後まで毒が全くない本は多い。それはそれでいいとして、自分はそういった本はなびかないので最近は敬遠している。かといって、「陰謀論」のコーナーに置かれてしまう、オカルト系にも全く興味はない。

   

ビートたけしの言っていることは7割うなずけるが、3割くらいは同意できないところもある。

それはそれでよくて、納得できない意見に耳を傾ける大切さをビートたけしから教えてもらったので、これからも少しずつ、自分とは正反対の主張をしている本を読んでいこうと思えた。

  

ビートたけしは没頭できるなにかがあればいい、と書いている。そこは同意できるが、一方で努力の大切さを力説しているように見える。そこはなんとも言えない。

ビートたけしは「没頭×努力」が天才の条件だと考えているのかもしれないが、自分は運が8~9割で、その残りが才能と努力だと考えている。

遺伝と格差について、個人的に研究しているところもあるせいか、どうしても非決定論的な向きのある考えには納得がいかない。

   

資本主義は「人の上にたちたい」という欲望によって、永遠に運動を止めることがないというのは自分もそう思う。

明らかに人類は既に全人類の食料を公平に分配できる能力を持っている。

それでも富は局在化している。

人間の矛盾といえばそれまでだが、他者への不安というものが完全に消えない限り資本主義は運動を止めることがないと、考えさせられた本であった。

ビートたけしは本を頻繁に出しているので、その意欲・活力を見習わないといけないと感じた。

つづく

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