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クリステン・R・ゴドシー『あなたのセックスが楽しくないのは資本主義のせいかもしれない』河出書房新社 (2022) + 石神賢介『婚活中毒』星海社新書 (2023) 読了

クリステン・R・ゴドシー『あなたのセックスが楽しくないのは資本主義のせいかもしれない』河出書房新社 (2022)
        石神賢介『婚活中毒』星海社新書 (2023)

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クリステン・R・ゴドシー『あなたのセックスが楽しくないのは資本主義のせいかもしれない』河出書房新社

結論

いきなり結論から書いてしまったほうがいいかもしれない。(部分的に持論を含む)

・北欧の幸福度が全世界で相対的に高い理由として、ジェンダーの平等の高さや社会保障の充実で知られているが、その背景として、共産主義の名残りとして残った「国家社会主義」(本書では全体主義を肯定はしない。ちなみに訳者によるとナチ党は「国民社会主義」とされる)による可能性があり、アメリカ(15位)や日本(47位)が北欧に及ばないのは、加速主義に基づいた資本主義システムをいつまでも続けており、格差が年々広まり続けているからかもしれない。このシステムではもはや幸福を上げることは難しいのではないか、ということである。

https://www.asahi.com/sdgs/article/14866028

(2023年世界幸福度ランキング:朝日新聞より)

  

・・・

  

先に結論を書いておいたので、あとは気長にゆっくりと二冊について、今日の感想を書いていきたい。

『婚活中毒』は、何冊か婚活の本を出している石神氏の婚活ルポとなっているが、タイトルの通り、目的が婚活することになってしまっているお話であった。

本人は自覚していて、もはやそれを楽しんでいるくらいだから、そこは本人の自由であって、むしろこれからも楽しくやってほしい。

  

自分が着目したのは、資本主義のなかの結婚という制度がいかに機能しているかという点である。

結婚の意義については、捉え方が多様にあるのでその考えは尊重したい。そのうえで自分が思うのは、資本主義と結婚制度という組み合わせは、功利主義的な観点からは相性が悪いということである。

2020年代も相変わらず少子化が進み、晩婚化も進んでいる。自分は資本主義のひとつの過程として捉える。

トマ・ピケティによれば、富は富のあるところにどんどん集積していくので、原理的に富が公平に分散することはあり得ない。トリクルダウンが仮にあるとしても、それは生活の質を上げることはできるが、幸福度を上げるくらいに十分な富の分配までにはいかないだろう。

  

普通に考えて、富が富のある箇所に集中していくという構図は、ピラミッドのように下にいけばいくほど人間の母数が増えていくわけであるから、一定の所得水準に満たない層が婚活市場から漏れるのはごく当たり前の現象であって、市場の原理に任せる仕方と同じように、結婚を個人の自由に任せる仕方では今後も更に少子高齢化と生涯の未婚率も上昇していくことは間違いない。

  

・・・

  

「常識を疑え」とよく人は言うが、自分の信念まで疑う人は少ないと思われる。

「資本主義だけが生き残り、資本主義だけが人類を幸福にする」ということを本気で疑ってみるのも良いかもしれないと、自分は本書を読み終えて思った。

言うまでもなく、本書は全体主義を否定する。そして、全体主義と社会主義を混同してはならないと強調している。

  

社会主義、共産主義は負のイメージが大きい。それは認めなければならない。

誰もが中国の報道の自由の低さにはうんざりするだろうし、クメール・ルージュの残酷さには怒りを通り越し、恐怖すら感じる。

ただ、クリステン・R・ゴドシー氏はそんな負の歴史から見逃されている、共産主義思想の良い面を生かすことの重要性を語る。

  

人間の三大欲求のうちの性については、どこか語ることがタブー視されがちであるが、この欲を抜きに幸福について語ることはできない。

セックスという言葉をあまり使いたくないが、例えば本書では東ドイツのほうが西ドイツよりも性生活がよかったと思っている割合が高いことを明らかにしている。

これはいわゆる「男尊女卑」が、社会主義によって無効化されている帰結と言える。全部は書ききれないが、本書ではこのような社会主義の良かった点について、しっかりとした学術のデータをもとに、多くかたられている。

  

・・・

   

自分は『婚活中毒』を読み、感情や思考までもがお金に染まっている現代人(勿論全員ではない)の低俗性を嫌でも感じさせられる。

男は男で、お金で女性を動かそうとし、女性は女性で、自分の価値というものを男の経済力や容姿の総合点から引き出して判断したりする。石神氏は、年下の女性に誘いのメールを送ったが、「自分はこんな男から落とせると思われている」と怒りの返信をくらう。

昔から思っているが、婚活は資本主義の縮図である。

  

自分は人間のパッケージ化と呼んでみたい。

お菓子には、原材料が示されていて、例えば「砂糖、ナッツ、アーモンド・・・」と書かれているが、婚活も同じで「175cm、年収1000万、大企業・・・」とパッケージ化されるのである。

   

マルクスは「存在が意識を規定する」と言ったが、果たしてどうなのだろうか?

物事を単純化するのは早計である。だから今書いてきたこともあくまで仮説として捉えたいのであるが、だからといって仮説を放棄する必要はない。

資本主義のもとで生まれてきたから考えが打算的になるのか、それとも元々人間は計算ができ、打算的な考えを持つから結果的に資本主義になったのか?

ルソーは前者の立場をとる。自分は完全にルソーやマルクスに同意するまでには至っていない。

  

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メモ

“20世紀の国家社会主義を語ろうとすると、「ふざけるな、社会主義は悪だ!」という批判にかならず出会います。しかしチェコの作家ミラン・クンデラが『存在の耐えられない軽さ』で述べたように、現実はそれほど単純ではありません。「いわゆる全体主義体制に反対して闘う者たちのほうも、問いと疑いだけでは闘えない。彼らもまた、自分たちの信念と、大多数の者たちに理解されて集団的な涙の分泌を惹起するはずの、ごく単純化された自分たちの真実とを必要とするのだ」” P20-21

  

(シャルル・フーリエ)

“「社会の進歩と歴史の変化は女性が自由に向けて前進することによって起こるのであり、逆に社会秩序の退廃は女性の自由が減少した結果として起こるのである」” P115

(エンゲルス)

“「母権制の転覆は女性の世界史的敗北であった。男性は家のなかで舵をにぎり、女性は品位を穢されて、男性の情欲の奴隷、子どもを産む単なる道具となった」” P117

(著者)

“富を蓄積したいという欲望こそが女性の地位を貶めたのだ、とエンゲルスは論じます。” P117

  

アインシュタインの資本主義批判

“アインシュタインはニュージャージー州プリンストンで晩年を過ごし、1949年にエッセイ「なぜ社会主義か」を発表しました。「資本主義社会の経済的無秩序」は人間の基本的な自由を奪うものであり、社会主義の側面をいくらか取り入れることでアメリカは自由を取り戻せるはずだ、とアインシュタインは述べています。” P195

  

資本主義とうつ病

“あなたは”ただの商品ではない。あなたの抑うつや不安は単なる脳の不具合ではなく、人間性を食いつぶして拡大していくシステムに対する健全な反応です。(・・・)メンタルヘルスと私生活が切り離せない以上、恋愛やセックスもまた政治的問題です。人と人とのつながりを経済的に押し込めようとする価値観に、なんとか対抗していかなくてはいけません。” P219

(訳者)

“北欧の社会民主主義モデルに見られるように、全体主義に陥ることなく、民主主義のなかで社会主義的な政策を取り入れることは可能です。” P247

  

さいごに、この本がもっと多くの人から読まれることを願いたい。

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