ラボ読書梟 (旧 はてなブログ大学文学部)

新・読書日記23

   マーク・フィッシャー『ポスト資本主義の欲望』左右社(2022)

■株式会社左右社

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橋爪大三郎『小室直樹の世界:社会科学の復興をめざして』ミネルヴァ書房(2013)

■株式会社ミネルヴァ書房

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日記

しばらく資本主義を疑うという、常識を疑う思考を続けている。

なぜ疑うのか。そういうことは「はてなブログ大学文学部」のほうで幾らでも書いてきたので部分的に割愛したいが、ひとまず格差の観点からは少なくとも今の新自由主義的な世の中では、全体としてあまり幸せになれないのではないかという考えを持って思考を続けている。

 

仲正昌樹教授は「新自由主義と自由主義の違いくらいは理解しなさい」ということを間接的に語っていた。

福祉国家を考える際に、最低限の勉強をしなければならないと自分は二年くらい前に思い、以降は地道にコツコツと勉強をしてきた。

 

仲正教授の問いかけによってある程度の、福祉国家の歴史的な流れを自分は追うことができたように思う。

自分は、ジョン・スチュアート・ミルから始まった自由主義からケインズの市場介入までを自由主義のタームとして捉えている。以降は政治と経済が密接に関係を持ったため、大きな政府(福祉国家)と小さな政府(コンサバーティブ)に陣営が分かれていき、後者がのちにリバタリアニズムなどの流派を生んだと解釈している。(正確には多少違うところもあるかもしれないが、解釈に幅がある程度はあると思うのでそこは見逃していただきたい)

  

加速主義的な資本主義はコロナ禍で限界が示されたように思う。

解釈が短絡かもしれないが、倒産するのは中小企業が中心で、アマゾンやグーグルなどの巨大企業はむしろ富を増やした。加速主義は格差拡大装置としてしか機能せず、低所得層をただただ苦しめるだけだということである。

富裕層は「なぜ努力しない者にお金を分配しなければならないのか」と普通考えるが、マイケル・サンデル『実力も運のうち』を読むと、その主張は完全には肯定できないと自分には思われた。もちろん、福祉国家が完全に正しいという理屈も同様ではあるが。

  

幸福について書こうとすると、何が幸福を決めるのかという話になり、細分化してくのでここでは今は触れないことにする。ひとまず読書日記だけを残したい。

・・・

『ポスト資本主義の欲望』

ということで、自分はしばらく資本主義について考えている。

類は友を呼ぶではないが、自分はマーク・フィッシャーの本は大いに参考になるように思う。

本書はマイケル・サンデル氏の白熱教室ほどではないが、学生との対話形式で進む。

  

体系的な理論書ではないが、この本からは様々な問いかけを与えてもらった。

例えば、

・家族制度と精神疾患はどのような位置関係にあるか?

・『再配分か承認か』という本があるが、「共同体か承認か」と問いかけたとき、共同体に必要な条件というものがいかなるものか、具体的に抽出するとき、それはどのようなものか?

・ソビエト体制で失敗した数々の試みを挙げよ

 

と、いろいろと浮かんできた。

終わりは見えないが、本ばかり読んで受動的にならずに、時には自分の力だけで考えてみたい。

・・・

『小室直樹の世界:社会科学の復興をめざして』

小室直樹の数々の本を読破したおかげで、ようやく宮台真司氏の小難しい話についていけるようになってきたと自負している。

今日は第四章「小室直樹と現実政治」から読み始めた。

宮台教授がアメリカの政治哲学を整理する。

 

三つの極

・コンサバ

・リバタリアニズム

・コミュニタリアニズム

宮台教授によれば、リベラルはやや失速し、現在はこの3つが主流とされているとのことである。

小室直樹は「社会学主義」とされるみたいであり、「国家を肯定する中間集団主義」と説明された。

「エートス」を学問の基盤に据えている小室直樹は、サンデルの共同体的徳と結びつくそうである。よって、小室直樹はマイケル・サンデルやチャールズ・テイラーらのコミュニタリアニズムに近いということになる。

 

“エートスは、サンデル的には共同体の徳と結びついています。徳は英語のヴァーチューの訳ですが、元々はラテン語のヴィルトゥで「内から湧き上がる力」ですから、僕ば内発性と訳します。ちなみにサンデルは、アリストテレスが、力によって維持される秩序よりも、ヴィルトゥによって維持される秩序を尊重したことを、参照しています。” P194

“グローバル化による共同体空洞化は、共同体的徳を脅かしがちです。” P194

小室直樹の本を読んでいれば、彼が田中角栄を評価していたことが分かる。

本書ではその理由を端的に説明してくれる。

宮台教授によれば、マックス・ウェーバーが「官僚を自由自在にコントロールできる政治家は優秀である」といったことを書いていて、田中角栄はその点において素晴らしいと小室直樹は見ていた。

言い換えれば、小室直樹とウェーバーからすれば、官僚をコントロールできない政治家は無能ということになる。

 

“アガンベンによれば、グルーバル化が政治家の官僚依存を強めるので、船は沈むのです。” P200

  

社会科学は時代を診断するツールとしてかなり有益のように自分には思えた。

今日はいろいろと勉強になったように思う。

つづく

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