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アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』読了

         アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』新潮新書(2020)

■株式会社新潮社

公式HP:https://www.shinchosha.co.jp/

公式X(旧 Twitter):https://twitter.com/SHINCHOSHA_PR?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor

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感想

古代の人類にとって最適化されたドーパミンの役割と意義が、今日ではスマホ依存症、及びそれに伴う睡眠不足やうつ病の増加傾向と、負の連鎖が続く(睡眠不足はブルーライトやスマホに夢中になることによって外遊びが減ること等による。うつ病は睡眠不足が原因のひとつとして挙げられる。)ということがよく分かる本であった。

(スウェーデンにおいては、2018年12月現在、全人口の9人に1人が抗うつ薬の処方を受けていると書かれている)

  

メモ

“(・・・)なんと、大人の9人に1人以上だ。寿命が延び、身体も元気になり、ボタンひとつで世界中の娯楽に手が届くのに、私たちは今まで以上にないほど気持ちが落ち込んでいるようだ。なぜこんなことになったのだろう。” P55

  

“人間に組み込まれた不確かな結果への偏愛。現代ではそれが問題を引き起こしている。” P76

大事なLINEかもしれない≒大事なメールが届いているかもしれない≒(ギャンブルで)「次は勝てるかもしれない」

⇒古代の生活様式から形成された人体のシステム、ドーパミンの分泌がギャンブル依存症の要因となってる

  

フェイスブックの「いいね」を開発したジャスティン・ローゼンスタインの言葉

“「製品を開発するときに最善を尽くすのは当然のこと。それが思ってもみないような悪影響を与えるーーーそれに気づいたのは後になってからだ」” P80

  

・スタンフォード大学が、マルチタスクが得意と思っている人ほど集中力がないことを実験で明かした

⇒スーパーマルチタスカー(例外の人)は人口の1~2%とされる

   

・パソコンよりも手書きでノートを作った方が記憶に定着する ーグーグル効果ー

“この研究結果には、「ペンはキーボードよりも強しーーーパソコンより手書きでノートを取る利点」という雄弁なタイトルがついた。” P98

⇒デジタル性健忘、あるいはグーグル効果と呼ばれる

“(・・・)別の場所に保存されているからと、脳が自分では覚えようとしない現象だ。脳は情報そのものよりも、その情報がどこにあるのかを優先して記憶する。” P104

  

・・・

  

本書を読んで「スマホデトックスしよう」で終わらせない

スマホデトックスもやるべきことのひとつとしては理解できるが、この本を中学生や高校生が読んで考えることはなんだろうか。(話題になっているから読んでみようという人、あるいは読んだ人が一定数いると仮定して)

・睡眠はどうやら想像以上に重要らしい

・私たちは全体的に集中力が落ちているらしい

・うつ病は睡眠時間と関係しているらしい

・定期的な運動が重要らしい

といった情報を片手に、何を考えるのだろうか。そういうことを想像してみると、ある人は「スマホをカバンに入れておこう」と考える。ある人は「スマホ以前の生活様式のほうが正しいのかもしれない」と考える。ある人は「やっぱり睡眠はしっかりとろう」と考えるかもしれない。

  

そうではない気がする。

大学生になれば否応なくラインの必要性を改めて認識してしまうかもしれない。

就職すればストレスのはけ口としてスマホに依存してしまうかもしれない。

学費のためのバイトや仕事で忙しく、睡眠不足になるかもしれない。

現代人の生活様式がどう考えても異常と認識しない限り、話は進まない。

  

当たり前すぎることは、それが当たり前でなくなって初めて認識できる。

自分も睡眠と精神疾患の相関性など、大人になるまで全く分からなかった。当たり前すぎて(睡眠がしっかりとれるうちはこういうことには全く関心が持てない)

  

この本があらゆる「事故」の予防線となるだろうか。

なる人にはなる。そうでない人はならない。

   

睡眠不足がいかに人間の活動を妨げるか、そういうことをどれだけの健康な人が認識できるか。

本書のインパクトはどれほどあったのか。(読み終わってもただ「スマホを手放そう」というメッセージしか言えないようではあまりにも弱い)

社会がこれからどれだけ変わる余地を残しているか。

本書の内容、構成は非常に優れているが、新書という形式上、ネットと依存についてもっと深い考察が足りないところが惜しい。

ということで、次はビョンチョル・ハン『情報支配社会』について日記に書くことにする。

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